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退職代行業務

1 この数カ月ほど、パワーハラスメントを受けたという労働者側の案件にかかわりました。ご本人はこのブログに経過も含め全て実名で記載してもよいとおっしゃっているのですが、炎上させてもご本人にもいいことはないので、雑感だけ記載します(この投稿内容もご本人の了承を得ています)。
2 「パワハラ」については、労働者側での相談自体は少なくありません。しかし裁判まで起こす案件は全体的には多くはありません(多くはないだけで、実際に訴訟を提起することはあります。現在進行形でもパワハラを理由に慰謝料を請求している裁判を担当しております)。
3 あまり多くない理由の1つは、裁判所が認定する慰謝料が決して大きな額ではないことにあります。今回も、これは違法性は認定されそうだという印象は受けましたが、慰謝料額は大きくはならない案件でした。その結果、訴訟提起までには至らないとの結論に至りました。
4 精神疾患を患い、働けなくなったような場合は、損害賠償額が高額になることもあります。労災手当あるいは傷病手当金を受給しながら、訴訟を行う経済的メリットのある案件もあるでしょう。しかしそこまでに至らない案件なら、なかなか、経済的なメリットだけを考えると訴訟を提起するのは躊躇します(もちろん、それでも訴訟提起を望まれるならば、訴訟を提起いたします)。
5 また、もう1つの訴訟にまで至らない理由は、パワハラを受けている労働者の弁護士に対する需要は、そのパワハラから逃れることにある点です。パワハラといっても、会社という小さな世界で行われていることであり、退職してしまえばいいだけの事案もあります。
6 近時、退職代行を業とする株式会社、あるいは労働組合が広告を出しています。非弁行為にあたるか否かという議論はありますが(私は少なくとも株式会社は非弁行為にあたると思いますが)、ただ退職の意思表示だけをして欲しいという労働者の需要があるのは確かです。
7 そうはいっても、生活もあり、簡単には退職できないということも多いでしょう。そのような場合、退職後のライフプランの設計を一緒に考えることも有益です。今までの収入が途絶えるのですから、人生設計を見直す必要があります。有休消化の概念を説明し、退職手当を貰えるまでの預貯金があるのかを確認し、毎月の引き落とし、携帯電話や生命保険の固定費の見直しも行う必要があります。実家に甘えることができるならば、一人暮らしをやめて実家に帰るという選択肢を取ってもよいでしょう。退職時期も「次の賞与まで」など、ある程度計画を立てる必要もあります。
8 ご相談を受けた案件は、名古屋では比較的社会的には信頼のあるほうに分類される会社でしたが、そのハラスメントは続き、終わりが見えませんでした。結局、会社側に弁護士が介入することを伝えたうえで、事務的に退職手続を淡々と行いました。悔しい思いをされてはいましたが、会社という小さな世界から離脱することで、終結いたしました。
9 会社でつらいことがあった際に、弁護士に相談をしたからといって、必ず訴訟等の法的手続に移行していくわけではありません。何をどこまで望まれるのかを弁護士と一緒に整理しましょう。