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【弁護士向け】民法改正への対応

弁護士 森田祥玄

令和2年(2020年)4月に、民法(債権法)がおよそ120年ぶりに改正されます。
民法が制定されたのは明治29年、1896年です。
廃刀令が発布されたのが明治9年、るろうに剣心の物語の始まりが明治11年、日清戦争開始が明治27年ですので、いかに古くから使われている法律だったかが分かります。別の視点からは、いかによくできた法律だったかが分かります。
それ以降もまったく改正がなかったわけではなく、平成16年(2005年)には民法をひらがなにするなどの改正が行われました。しかし今回の改正は、債権法の歴史の中ではもっとも大きな改正になります。
弁護士の皆さまの対応も、せっかく民法を勉強してきたのにどうしてくれるんだと憤りを感じながらも弁護士会の研修に出席する方、もう一度法科大学院に入り直したいと現実逃避をされておられる方など、様々かと思います。
泣いても笑っても、4月はやってきます。4月以降に賃貸借契約を締結する場合には、極度額を記載しなければ連帯保証契約そのものが効力が生じません。4月以降に発生した交通事故については遅延損害金や逸失利益の計算が異なります。弁護士会で開かれる研修を受け、自分で勉強して、どうにか対応していくしかありません。

そこで私が現在までに自分で購入させて頂いた書籍を紹介させていただきます。ごく普通の名古屋の街弁の、2020年1月現在の感想ですが、参考にしてください。偉そうに書評として書いておりますが、ここに記載している本はいずれも私が購入した方がよい、素晴らしいと思った本です。

【東京リーガルマインドLEC総合研究所「2020年版 司法試験&予備試験 完全整理択一六法 民法」】
最初に紹介するのはやはりこの本でしょうか。若手弁護士ならばご存じかと思いますが、司法試験・予備試験対策用の逐条解説テキストです。通読する本ではありませんが、民法の条文に出会う度に択一六法を読む、という作業を繰り返せば、理解が進みます。なりふりかまっていられない実務家にはありがたいテキストです。

【黒松百亜先生「マンガでわかる!民法の大改正」】
 アマゾンで「マンガ 民法改正」で検索をして最初に出てきた本です。2019年7月に第2刷も発売されました。もう少し条文も書いて頂けるとありがたいのですが、弁護士が主要なターゲットではないので仕方ないですね。自分で条文を引く練習にはなります。数時間で読めます。

【アガルートアカデミー「マンガでやさしくわかる試験に出る民法改正」】
 アマゾンで「マンガ 民法改正」で検索をして2番目に出てきた本です。やはりすっと読めます。私は知りませんでしたが、今はアガルートアカデミーという司法試験予備校があるそうです。

【道垣内弘人先生「リーガルベイシス民法入門第3版」】
 民法を初めて学ぶ人でも読める、民法の入門書です。顧問先法務部の方との民法勉強会にこの本をテキストとして指定させて頂いてたことがあり、私にとっては読みやすい慣れている本です。冒頭部分は特に入門的な内容が続き、弁護士にはつらいかもしれません。思い切って前半3分の1を飛ばして、契約部分から読むと良いかと思います。私は長らくお世話になっている入門書で、民法の入門的内容を教える必要のある人にはおすすめです。

【阿部・井窪・片山法律事務所「契約書作成の実務と書式 — 企業実務家視点の雛形とその解説 第2版」】
 民法の本ではありませんが、この年末年始で通読させて頂きました。旧法を現行法と述べている点からして、第2刷等で修正を重ねていく前提のように思います。読者の期待値が高すぎたのかアマゾンのレビューは辛口なものもあり、確かに急いで発刊をした印象がありますが、それでも契約書修正関連では類書は少なく、私は現段階では手元に置いておいたほうがよい本だと思います。

【弁護士法人飛翔法律事務所「改訂3版 実践 契約書チェックマニュアル」】
 やはり民法の本ではありませんが、手元においたほうがよい本として挙げさせて頂きます(私も第3版は通読はしておりませんが)。第2版を、私が事務所内で若手弁護士に契約書チェックの勉強会を開く際に参考資料として利用させて頂いておりました。

【嶋寺基先生「新しい民法と保険実務」】
 新しい民法を、保険実務という切り口からまとめた本です。切り口を変えた本を読むことで民法を立体的に理解できるという点から、保険実務をあまり扱わない弁護士にもおすすめです。保険実務を扱う弁護士は一読した方がよいだろうと思います。

【潮見佳男先生ほか「Before/After 民法改正」】
 この本がもっともおすすめで、4月以降当分、共通言語の基本書となるのではないかと思います。事例があったほうが頭に入りやすく、1つの事例に対する解説もコンパクトですので、読み進めることができます。この本を読みながら、条文を引くことで、一歩深い理解に到達できる…気がします。私がこの本を読んだのは2年以上前で訂正もあるようですので、改めて最新版を購入し直し、4月までに読み直す予定でおります。

 以上、業界人向けの記事です。皆さま、4月に向けて共に頑張りましょう。