ブログ

Blog

時効の更新・完成猶予について2(弁護士・法律学習者向け)

弁護士 岡田貴文

 改正民法において時効の「完成猶予」及び「更新」を理解するポイントは、旧法で勉強したときの、「あれは中断、これは停止…」という知識を、とりあえず一回すべて忘れてみるのが良いのではないか、というお話をしました。

 「完成猶予」とは、時効の完成が一時猶予されることです。
 「更新」とは、進行していた時効期間の経過がリセットされて新たにゼロから進行を始めるという効果をいいます。

 さて、ではこれらの概念とそれぞれが生じる事由について、どのように理解をしておけばよいでしょうか?
 簡単です。

 改正民法では、原則として、権利者が権利行使の意思を明らかにしたと評価できる事実が生じた場合を 完成猶予事由 としました。
 そして、権利の存在について確証が得られたと評価できる事実が生じた場合を 更新事由 としました。


 例えば、訴訟提起(いわゆる「裁判上の請求」)をした場合、訴えの提起のみだと、ただ権利者が権利行使の意思を明らかにしただけなので、「完成猶予」のみにとどまります(民法147条1項「…時効は、完成しない」)。
 一方、訴訟が進行して判決が出され、権利者の権利が判決で確定された場合には、権利の存在について確証が得られることになる訳ですので、時効が「更新」されるにいたります(民法147条2項「…時効は、…新たにその進行を始める」)。
 分かりやすいですね。

 では、訴え提起をして時効が「完成猶予」されたものの、やっぱり止めたと言って訴えを取り下げてしまった場合はどうなるでしょうか?

 権利者の権利が判決で確定されないままで訴訟が終わってしまった訳ですが、この場合には、その終了の時から6か月を経過するまでの間は時効の完成が猶予されます(民法147条1項柱書かっこ書き)。
 いわゆる「裁判上の催告」という判例法理(最判昭和45年9月10日)が明文化されただけのものです。

(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)
第147条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 裁判上の請求
二 支払督促
三 民事訴訟法第二百七十五条第一項の和解又は民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)による調停
四 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加
2 前項の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。

 では、以上に述べたこともふまえながら、他の完成猶予事由及び更新事由も見てみましょう。

 次の記事に続きます。

☆☆
 法律トラブルはすぐに弁護士に相談することが大切です。
 名古屋、久屋大通駅から徒歩1分の愛知さくら法律事務所へお気軽にご相談ください。