ブログ

Blog

改正民法における主観的要件について (民法改正 弁護士・法律学習者向け)



民法総則の「意思表示」の節ところでは、旧民法において、条文上は「善意」としか書かれていないところで、「無過失」まで必要なのか、「無重過失」でいいのか、「善意」で足りるのか、など論点があり、司法試験受験生はそれを覚えるのが面倒でした。


改正民法では、この主観的要件について、条文上で明確に書き分けてくれています。


例えば、錯誤取消しのときの第三者保護に関する規定(95条4項)では、以下のとおり「善意でかつ過失がない」とはっきりと書いてくれています。

第95条4項 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。


また、詐欺取消しのときの第三者保護に関する規定(96条3項)でも、以下のとおり「善意でかつ過失がない」とはっきり書いてくれています。

第96条3項 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。


その一方で、心裡留保の第三者保護に関する規定(93条2項)では、 単に、「善意」としか書いていません。

93条2項 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。


このように、条文上、「善意」と「善意でかつ過失がない」という風に書き分けられていることから、93条2項の心裡留保の場合には、相手方は、過失があっても「善意」であれば保護してもらえることが分かります(前々回のブログで書いたように、自分で心裡留保したような表意者よりも、第三者を保護してあげる要請の方が強いから)。


以上のとおり、民法総則の意思表示のところは、主観的要件が条文上で使い分けられるようになりましたので、受験生的には覚えることが減って楽になりました!

ただし、類推適用で使っていく場面では、やはり論証をして、動的安全と静的安全のバランスを調整して主観的要件を決めて行く必要があるのだと思います。
そのため、表意者の保護か第三者の保護か、という利益調整の感覚や考え方については、しっかりと身につけておく必要があります。

☆☆
 法律トラブルはすぐに弁護士に相談することが大切です。
 名古屋、久屋大通駅から徒歩1分の愛知さくら法律事務所へお気軽にご相談ください。