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SNSアカウントの相続

弁護士 森田祥玄

第1 デジタル遺産とは

 最近、法律書を読んでおりますと、デジタル遺産という言葉が出てくることがあります。
 法律上、デジタル遺産という言葉の定義はありません。
 私が読んだ文献では、暗号資産だけではなく、スマートフォンで撮影した写真や動画、パソコンの中の文書、SNSアカウント等、相続の際に問題となるデジタル化された情報全体を指すことが多いようです。

第2 SNSのアカウントを相続できるのか

1 SNSアカウントについては、SNSアカウントそのものを相続するのではなく、SNSを運営する各社との契約上の地位を相続すると考えます。
2 日頃はあまり意識していませんが、SNSを利用する一番はじめには、我々はSNS運営会社の利用規約に同意をして、利用をスタートしています。よって、SNSを運営する各社との利用規約に拘束されますし、相続人も同様です。

第3 代表的なSNSの対応

 令和3年10月現在の、いくつかのSNSの対応を紹介します。

1 Twitter

 Twitterは、ユーザーが亡くなった場合の処置について、利用規約には明記していません。しかしTwitterのヘルプセンターを確認しても、アカウントを相続人が引き継ぐ前提の受け付けはしておらず、少なくとも明示的には、相続によるアカウントの引き継ぎをTwitterは予定していないものといえます。
 Twitterユーザーが亡くなった場合は、近親者からアカウント削除のリクエストを送信します。そして申請者の身元が確認できる書類、死亡通知書等を提出すれば、アカウントの削除が行われます。

2 Facebook

 Facebookヘルプセンターは、「いかなる場合であっても、第三者が別の人のアカウントにログインすることはFacebookのポリシーに違反します」と記載されており、この第三者には相続人も含むというのがFacebookの考えです。相続人であっても、故人のアカウントに自由にログインできるようにはなりません(近親者からの要望であれば、Facebookはアカウントの削除には応じます)。
 なお、Facebookには、追悼アカウントという制度があります。ユーザーが亡くなったことをFacebookが把握すると、原則追悼アカウントに移行します。
 Facebookユーザーは事前に、ユーザーが亡くなったら追悼アカウントとしてアカウントを残すのか、アカウントを削除するのかを選ぶことができます。追悼アカウント管理人も事前に選ぶことができます。追悼アカウントの管理人は、カバー写真を変更したり、アカウントの削除をリクエストすることは可能ですが、アカウントそのものにログインはできません。
 このように、Facebookには追悼アカウントという枠組みは存在するものの、相続によるアカウントの引き継ぎまではできないものとされています。

3 Instagram

 InstagramはFacebookのグループ企業です。Facebook同様、「いかなる場合であっても、第三者が別の人のアカウントにログインすることはInstagram のポリシーに違反します。」と記載されており、ログインするために必要なアカウントの情報を教えてもらえるわけではありません。ユーザーが亡くなったことをInstagramが把握すると、追悼アカウントに移行します。また、故人の近親者であることを証明できれば、アカウントの削除を依頼することはできます。

4 LINE

 LINEは利用規約に、「本サービスのアカウントは、お客様に一身専属的に帰属します。お客様の本サービスにおけるすべての利用権は、第三者に譲渡、貸与その他の処分または相続させることはできません。」と明記しており、アカウントの相続を明示的に否定しています。相続人からのアカウント削除の申請は受けつけておりますが、アカウントを引き継ぐことはできません。

第4 SNSアカウントの相続の可否

 以上のように、SNSを運営する各社は、アカウントの相続には消極的な立場を取っており、アカウントにログインすることさえも難しいのが通常です。
 ただし、Facebookヘルプセンターには、裁判所からの命令等があれば検討する、との記載もあります。
 法制度が異なる外国での話ですが、子どもが亡くなった原因(自殺であったか否か)の調査のために、相続人(親)がFacebookに、アカウントへのアクセス許可を求めた裁判がありました。ドイツ連邦裁判所は、デジタル化されているからといって日記や手紙と異なるわけではないとして、アカウントの相続を認めました。
 このように、開示を求める特別な理由がある場合、あるいは、例えば多数のフォロワーがいてアカウントそのものに経済的に高い価値があるような場合、本当に相続できないのか、相続人がログインさえできないのかは、本日現在、日本の裁判所の判断は示されていないようです。
 いずれにしろ、相続人が困らないように、死亡後にどのようにデジタル情報を処分してほしいのか、そしてその手順について、きちんと伝えておくことが大切です。