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真実ではないと思える主張

弁護士 森田祥玄

弁護士の仕事をしていると、定期的に、争点は「嘘をついているか否か」という類型の裁判に出会います。
弁護士も裁判官も、嘘をついているかどうかを判断する特別な技能を持っているわけではありません。
嘘のように思える主張であっても真実であることも多々あり、その逆もあり、我々を日々悩ませます。
私が考える、裁判官に嘘だと思われやすい主張、というものを、交通事故と不貞慰謝料を例に簡単にまとめてみます。
話し方のクセや性格もあり、一概にはいえませんので、あくまで一般論です。

【客観的な証拠と矛盾している】
客観的な証拠との矛盾がある場合、裁判所はその矛盾部分以外の供述全体についても、疑わしいと考える傾向にあります。
当たり前のように思われますが、人間の記憶は徐々に薄れていきますし、違う記憶がすり込まれることもあります。
例えば交通事故の裁判で事故態様を争っているときに、「事故のあと警察とは5分ほどしか話していない」と言っていたのに、実況見分調書には60分ほどかけて警察に事故態様を説明したことになっていることがあります。
警察が意図的に長く書いていることもあるでしょうが、記憶のほうが間違っていることもあるだろうと思います。
事故直後はパニックになっていて、夜であったり、疲れもあり、正確に記憶できていないことも多々あります。
裁判で尋問を行う頃には事故から1年以上経過しており、はっきりとは憶えていないことも多いかと思います。
しかし客観的な記録と明らかに違うことを述べている場合、ほかに決定的な証拠がなければ、このようなことでも不利な認定をされる理由の1つとなります。
尋問では記憶のとおりに述べるしかないのですが、早い段階で何が起きたのかを時系列ごとに早めるにまとめる必要があります。
また、事故前後30分の出来事は分単位で表にしておいたほうがよいでしょう。

【動かしがたい事実と整合しない】
利害関係のない第三者の目撃や、多数人の意見が合致する事実と異なる主張は、証言全体の信用性が下がります。
例えば多重衝突事故で、無関係の当事者が雨だったと言っているのに、本人が晴れていたと言っているような場面です。
交通事故の事故態様そのものとは関係がなくても、供述全体の信用性はやや下がります。

【関連の薄いところで嘘をつく】
例えば交通事故で、「過去にも交通事故に遭ったことがありますか」と相手方弁護士に聞かれ、本当はあるのにないと答えてしまう人がいます。
あると答えると何か不利になるのではないか、との気持ちが働きますし、その気持ちは分からなくはないです。
しかし過去の交通事故と今回の交通事故の関係が薄くても、客観的な事実と異なることを言ってしまうと、裁判官は供述全体の信用性を疑います。

【発言に具体性、一貫性、合理性がない】
交通事故の裁判で事故態様を争っているときを例にしますと、事故態様を尋ねたら、「もう、わーとなって、ドンとあたって、気がつけば警察が来ていました」など、具体的に回答ができないことがあります。
実際には一瞬のことなので覚えていないこともあるだろうと思うのですが、有利・不利でいいますと、やはり交通事故などの特殊な記憶に残りやすい事柄について、あいまいな回答をしていると、不利な認定がなされます。
このような場合、どう対応するか弁護士を悩ませるのですが、覚えていないのに記憶を作り上げるわけにもいきませんし、作り上げた記憶はどこかで矛盾が露見します。
覚えていないなら、当初から一貫して覚えていないと主張し続けるのが結果的にはまだ無難な判決を導くように思います。

【結論をいわず証拠の提出を求める】
例えば弁護士から内容証明郵便で不貞慰謝料を払うよう求めると、「証拠を出してください。」と主張する人がいます。
不貞はあったかなかったかの2択であって、証拠があるかないかで結論が変わるものではありません。
本当にしていないのなら証拠はありませんので、証拠を出してくださいと求めること自体が、証拠が存する可能性を認めているようなものです。
現実には例えばとても親しいけど不貞はしてないという場面もあり、まずは証拠を求めること自体は間違ってはいないのですが、開口一番証拠はあるのか尋ねるのは、やはり疑わしいという印象を持たれてしまいます。

【結論をいわず一般論だけを答える】
弁護士から手紙を送ると、「ぼくのようなおじさんを、あのような若い子が相手するわけがない」というな反論がなされることがあります。
この反論自体は皆さんがするものなのですが、一般論だけが続くと徐々に疑わしくなります。
「していない。」とまず言い切ってから一般論を話すのならまだ分かるのですが、「ぼくのようなおじさんをあのような若い子が相手するわけがない」「ぼくのような子どももいて立場もある人間がそのような行為に及ぶわけがない」と主張をし、「それで認めるのですか、認めないのですか」と聞かれてはじめて「認めない」と回答をする場合は、なぜ最初に結論を言えないのだろうかと疑わしく思われてしまいます。

【本論か外れ、揚げ足を取ろうとする、些細なことにこだわる】
弁護士から手紙を送ると、「なぜ弁護士なのに内容証明郵便ではなく普通の郵便なのだ」「名古屋の弁護士なのになぜ東京から内容証明郵便が届くのだ」「おれは名古屋の弁護士会の会長を知っている」など、本論と関係のないどうでもよいところにこだわる人がいます。
関係のないところにこだわる場合、本論に入れない理由があるのではないかと疑わしく思われてしまいます。

本当のことを言っているのか否かを判断するのかは実際には大変に難しいものです。
実際にはどちらかが嘘をついている事案でも、どちらも本当のことを言っているようにみえて、決定的な決め手がない、という案件も多数あります。
このような場合、不法行為に基づく損害賠償などでは、請求する側が立証する責任を負う(立証できなければ(例えば浮気をしているのかしていないのか、結局よく分からなければ)、請求する側が負ける)という建前になっています。
しかし実際の判決では、裁判官が、こちらの主張のほうがより一貫している、虚偽の主張をする理由がない、などの、抽象的な理由をつけて、どちらかの言い分が正しいと決めることが多いという実態もあります。

司法権とは、具体的事件に法を適用し、事件を終局的に解決する国家作用と言われています。
意見の分かれる、どちらとも取れる事柄に対しても、むりやり判定をして、紛争を終わらせるのが裁判の役割なのです。
本当のことを言っているのに信じて貰えないことはとてもつらいことで、実際に信じて貰えないまま判決になることもあるのですが、民事の裁判とはそういうものだ、という割り切りも必要になることがあります。
事実関係を争っている、どちらかが嘘をついている、という紛争も早期の弁護士の関与が必要となる類型です。
お困りの際は弁護士にご相談ください。

弁護士業務とセカンドオピニオン

弁護士 森田祥玄

1 一度弁護士に依頼をしたなら、原則として、依頼をした弁護士を信じて手続を進めていくほうがよい結果になるだろうと思います。
2 しかし、自分が依頼をした弁護士の進め方や処理方針に疑問を持ったときは、セカンドオピニオンを仰いで頂いても構いません。
3 セカンドオピニオンを仰ぐときは、現在依頼をしている弁護士にその事実を伝えなくても構いません。手元の資料をもとに、疑問点を整理し、これ以外の方針を採り得ないのか、納得いくまで質問をしてください。
4 自分の依頼者がセカンドオピニオンを仰ぐことについては、快く思わない弁護士もまだいるかもしれません。しかし若い弁護士を中心に、それは依頼者の当然の権利だと考える弁護士も増えました。私個人としては、仮に自分の依頼者が他の弁護士にセカンドオピニオンを仰いだとしても、良くも悪くも特別な感情は持ちません。ご希望があれば別の弁護士に相談をしやすいように資料をまとめて、争点とセカンドオピニオンを仰ぎたい点を整理して、お渡ししても構いません。
5 セカンドオピニオンを受ける側の弁護士の立場に立ちますと、まず、現在担当している弁護士に比べて、圧倒的に情報量が不足しています。1年ほど裁判をやってきた案件のセカンドオピニオンを、30分(税抜きで5000円)の法律相談で行うのは、困難を伴います。セカンドオピニオン用に数時間かける必要があるのが通常で、事案にもよりますが、例えば名古屋市の各区役所の無料法律相談(通常15分~20分程度)でセカンドオピニオンを仰ぐのは、現実的ではないことも多いかと思います。記録を検討し意見を伝えるための弁護士費用をいくらに設定するかは事案によりけりとしか言いようがありませんが、私なら、例えば3時間ほどの検討時間と1時間の打合せ時間を要する案件で10万円(税別)ほどでしょうか。弁護士のタイムチャージ(1時間に要する費用)は弁護士によって異なりますが、概ね2万円から3万円(税別)前後かと思います。「例えば5万円でできる範囲内で答えて欲しい」などの要望にも対応できることもありますので、予算も率直にお伝えください。
6 セカンドオピニオンで悩ましいのが、記録にあらわれない、現在担当している弁護士しか持っていない情報があることです。例えば裁判手続では裁判官は、将来的にどのような判決になるのかはっきりということはあまりありません。しかし、目線、態度、声等、体全体で有利・不利の雰囲気を出すことがあります。それは実際に裁判所に行く担当弁護士でしか感じ取れないもので、その情報がないままアドバイスを行うと、望まぬ結論になるかもしれません。
7 よくあるセカンドオピニオンの類型としては、「担当弁護士が和解すべきと私を説得してくる。私は和解に納得できていない」というものがあります。このような思いを頂いたなら一度はセカンドオピニオンを仰いで頂いた方がよいだろうと思います。しかし、実際には、「私も担当弁護士のおっしゃるとおり、和解をした方がよいとは思いますよ」と回答する場面が多いのも実情です。どこで納得をするかの問題でもありますので、さらにサードオピニオンを仰いでもよいのかもしれません。
8 過去にセカンドオピニオンから受任をした経験もまったくないわけではありません。交代した方がよいと思える類型の1つは、明らかなミスマッチがあると思える場合です。相談者はメールでのやり取りを望んでいるのに、郵送かFAXしか使えない弁護士ならば、交代を検討した方がよいかもしれません。また、既に担当弁護士との信頼関係が破綻しており、担当弁護士も交代を希望していると思われる場合も、セカンドオピニオンから受任をした方がよい類型かと思います。
9 従前は、セカンドオピニオンの相談を受ける際は、担当弁護士に不満を持っているのが通常でした。しかし最近は、担当弁護士に特段の不満はないのだけれど、さらにいいアイデア、提出できる証拠や文献がないかということを聞きたい、というご相談もあります。セカンドオピニオンが身近になったということかと思います。なかなか短い法律相談の時間で役に立つアドバイスをするのも難しく、また、受任を前提としないご相談にも、もちろん費用は発生するのですが、ご希望がありましたらそのような需要にもお応えできるよう、見積もりをお出しいたします。
10 担当弁護士の知識不足、力不足と思われる事案は、セカンドオピニオン全体からすればごくまれです。しかし裁判手続は一生に何度もあるものでもありませんので、ご自身の案件がその「ごくまれ」に該当するのか否かも、確認をしたほうがよいだろうと思います。
11 セカンドオピニオンを仰ぎたい、というご希望にも当事務所の所属弁護士は対応いたします。その際の費用も見積もりはいたしますので、お気軽にご連絡ください。

退職代行業務

1 この数カ月ほど、パワーハラスメントを受けたという労働者側の案件にかかわりました。ご本人はこのブログに経過も含め全て実名で記載してもよいとおっしゃっているのですが、炎上させてもご本人にもいいことはないので、雑感だけ記載します(この投稿内容もご本人の了承を得ています)。
2 「パワハラ」については、労働者側での相談自体は少なくありません。しかし裁判まで起こす案件は全体的には多くはありません(多くはないだけで、実際に訴訟を提起することはあります。現在進行形でもパワハラを理由に慰謝料を請求している裁判を担当しております)。
3 あまり多くない理由の1つは、裁判所が認定する慰謝料が決して大きな額ではないことにあります。今回も、これは違法性は認定されそうだという印象は受けましたが、慰謝料額は大きくはならない案件でした。その結果、訴訟提起までには至らないとの結論に至りました。
4 精神疾患を患い、働けなくなったような場合は、損害賠償額が高額になることもあります。労災手当あるいは傷病手当金を受給しながら、訴訟を行う経済的メリットのある案件もあるでしょう。しかしそこまでに至らない案件なら、なかなか、経済的なメリットだけを考えると訴訟を提起するのは躊躇します(もちろん、それでも訴訟提起を望まれるならば、訴訟を提起いたします)。
5 また、もう1つの訴訟にまで至らない理由は、パワハラを受けている労働者の弁護士に対する需要は、そのパワハラから逃れることにある点です。パワハラといっても、会社という小さな世界で行われていることであり、退職してしまえばいいだけの事案もあります。
6 近時、退職代行を業とする株式会社、あるいは労働組合が広告を出しています。非弁行為にあたるか否かという議論はありますが(私は少なくとも株式会社は非弁行為にあたると思いますが)、ただ退職の意思表示だけをして欲しいという労働者の需要があるのは確かです。
7 そうはいっても、生活もあり、簡単には退職できないということも多いでしょう。そのような場合、退職後のライフプランの設計を一緒に考えることも有益です。今までの収入が途絶えるのですから、人生設計を見直す必要があります。有休消化の概念を説明し、退職手当を貰えるまでの預貯金があるのかを確認し、毎月の引き落とし、携帯電話や生命保険の固定費の見直しも行う必要があります。実家に甘えることができるならば、一人暮らしをやめて実家に帰るという選択肢を取ってもよいでしょう。退職時期も「次の賞与まで」など、ある程度計画を立てる必要もあります。
8 ご相談を受けた案件は、名古屋では比較的社会的には信頼のあるほうに分類される会社でしたが、そのハラスメントは続き、終わりが見えませんでした。結局、会社側に弁護士が介入することを伝えたうえで、事務的に退職手続を淡々と行いました。悔しい思いをされてはいましたが、会社という小さな世界から離脱することで、終結いたしました。
9 会社でつらいことがあった際に、弁護士に相談をしたからといって、必ず訴訟等の法的手続に移行していくわけではありません。何をどこまで望まれるのかを弁護士と一緒に整理しましょう。

ネガティブオプションへの対応

弁護士 森田祥玄

1 中小企業から受ける新規の相談例をアップいたします。
2 名古屋でも古くからある類型ですが、「勝手に送りつけられた雑誌の代金を請求された」との相談を受けることがあります。購入の申し込みをしていないのに一方的に商品を送りつけ、代金の請求をすることを、ネガティブオプションと呼びます。送りつけ商法といったほうが、聞いたことがあるかもしれません。
3 法律的には、売買契約は、お互いが売買契約を行うという意思の合致がなければ成立しません。商品を送りつけても、お互いの売買契約の意思が合致したわけではありませんので、売買契約は成立しません。また、勝手に送りつけてきたからといって、商品の返送義務は生じません。
4 もっと、理論的には、送りつけられた商品は販売業者の所有物ですので、民法上は、勝手に処分することにはリスクが残ります。また、民法526条2項は、契約は、「承諾の意思表示と認めるべき事実があった時」に成立するとされておりますので、この点からも勝手に使ったり、廃棄することもリスクがあります。
5 消費者ならば、特定商取引に関する法律59条1項により保護されます。この条文は長くて読みにくいのですが、商品の送付があつた日から14日が経過したら(放っておけば)、送りつけた側は商品の返還さえ請求できなくなり、消費者は廃棄することができるとされています(実際に廃棄をする前には、必ず弁護士に事前にご相談ください)。
  しかし中小企業や個人事業主には、このような条文が適用されないことがあります。同59条2項には、「前項(1項)の規定は、その商品の送付を受けた者のために商行為となる売買契約の申込みについては、適用しない」とされています。この「商品の送付を受けた者のために商行為となる」か否かについて、裁判で争える場面も多いだろうとは思います。「何も私のためになっていない商品だ」などの主張を行うことは考えられますが、裁判で争うことになること自体がコストがかかります。
6 よって、中小企業や個人事業主には、14日経過したからといって、勝手に廃棄することにはリスクが残ります。かといって、保管をし続けるのも大変です。商法510条本文は、「商人がその営業の部類に属する契約の申込みを受けた場合において、その申込みとともに受け取った物品があるときは、その申込みを拒絶したときであっても、申込者の費用をもってその物品を保管しなければならない」と定めています。商法510条はまともな商売人同士の取引を想定した条文ではありますが、保管代の請求についても、解釈に争いが生じます。
7 また、商法509条1項は「商人が【平常取引をする者から】その営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならない」と定め、2項にて、「商人が前項の通知を発することを怠ったときは、その商人は、同項の契約の申込みを承諾したものとみなす」と定められています。雑誌を送りつけてくる業者は「平常取引をする者」にあたらないため、同条文の適用はないという反論をしていくことになるのですが、やはり争うこと自体がコストがかかります。
8 やはり、対応方法としては、送りつけた業者へ承諾しないことをFAX等で通知し、送付されてきた商品を返送することが望ましいだろうと思います。
9 弁護士から送りつけた業者へ内容証明郵便を送付し対応することももちろん可能です。弁護士への依頼をお考えの方は、当事務所までお電話をお願いいたします。

【弁護士向け】事務所移籍時の諸手続

弁護士 森田祥玄

 私は名古屋にある弁護士法人から、ご縁を頂き、現在の愛知さくら法律事務所に籍を移させていただきました。大変幸運なことでしたし、受け入れてくださった皆さまに感謝しております。

 ニッチな需要かと思いますが、備忘録を兼ねて弁護士法人(やインハウス)から法人ではない既存の事務所への移籍を考えている弁護士向けに投稿をしておきます。地域によって対応は異なるようですので、愛知県弁護士会(それも名古屋近辺)に限られる話かもしれません。

1 退職半年前
 弁護士法人に退職をすることを伝え、引き継ぐ事件と移籍後もそのまま担当する事件を整理する。弁護士口座を作成していない人は、着手金・報酬金用口座と預り金口座の二つを作成する。
 クレジットカードを持っていない、あるいは一つしか持っていない人は、複数作っておく。
 フリーランス向けの確定申告の本、青色申告の本を読んでおく。
 今まで白色申告だった人は、退職前の3月15日までに青色申告を行う旨の届け出を出しておく。届け出書類は税理士にもよく相談をする。
 消費税の課税事業者になるタイミングを勉強する。弁護士は簡易課税の届け出をするのが一般的。すぐに届け出が必要になるわけではないが、その時期は勉強しておく。

2 退職3ヶ月前
移籍後の事務所にメールアドレスの作成を依頼する。
 また、移籍後も担当する案件については、移籍をする事実と、移籍後のメールアドレス、電話番号等の連絡先を確立しておく。
 フェイスブック、LINE、スカイプなど、メール以外の連絡手段を確実に確保しておく。
移籍後に使用するパソコンを購入し、設定をする。
 パソコンの設定は移籍先の事務所にもよく相談し、慣れないなら費用を支払ってプロに設定してもらった方がよい気がします。
新しい名刺、職印を作成する(弁護士会の協同組合に相談すればOKです)。
弁護士向けの確定申告の本を読み、知人の税理士や移籍先の弁護士に事前に経理をどのように行っているのか相談をしておく。

3 退職2ヶ月前
 弁護士会への届出口座の変更方法を弁護士会に確認する。弁護士会費の引き落とし、経費等雑費の引き落とし、弁護士会からの振込の、合計3つの届け出が必要となります。弁護士会費の引き落とし口座はすぐには変更できないため、2ヶ月ほど前には申請しておいたほうが無難です。
弁護士賠償保険は無保険期間がないように、移籍先の事務所に賠償保険の加入方法を確認しておく。

4 退職1週間前
法テラスに変更のFAXを送る。弁護士会に変更届の書類を提出する(日弁連のHPにもある)。
 弁護士個人の変更届と、弁護士法人の構成員変更届の二つがある。
 すべて自分でやるのか、法人がやってくれるのか、所属事務所に確認をする。
弁護士協同組合に、事務所が変わることを伝え、連絡先や引き落とし口座変更の手続きを行う。
他の弁護士に引き継ぐ案件の辞任届等を提出する(裁判所には原本提出)。
旧事務所と郵便物のルールを決める(郵便局のHPで転送届を提出する。転送届はネットで完結可能。後見等の郵便物もルールを決めておく。必要に応じレターパックを10個ほど旧事務所においておく)。
 所属した事務所でお世話になった人(ボス弁など)に、お礼の品(ネクタイ、ボールペン等)を準備する。所属した事務所の皆様にもお菓子などを配る。

5 退職後1週間
年金を国民年金に切り替えるため、法人から社会保険資格喪失証明書などの退職を示す書類を作成してもらい、区役所の窓口に行く。
健康保険は、自分の収入で任意継続と国保切り替えのどちらが得か区役所窓口に確認する。任意継続の方が良いことが多いだろうから、その場合は任意継続に必要な書類を提出する。
担当案件の送達場所変更の届け出を行う。裁判所に係属している案件、後見案件、管財案件、示談案件の相手方代理人など。
ネット上の媒体(HP、弁護士ドットコムなどのポータルサイト、フェイスブックなど)の表記を変更する。
弁護士会に、交通事故相談の際の利益相反の対象となる保険会社が変更となる旨報告する。  

6 退職後一ヶ月
 経理のやり方を確立する(私は弁護士経理(いわゆる弁経)を使用しています)。
 成年後見の住所変更登記の申請を行う。弁護士会に事務所履歴事項証明書なる書類の取得方法を電話で尋ねる。そして法務局のHPから必要書類をダウンロードし、事務所履歴事項証明書を同封し、郵送する。これは初めての経験だと結構苦労するかもしれません。
小規模企業共済への加入を検討する(これは必須だろうと思います)。
日本弁護士国民年金基金への加入を検討する(確定拠出年金のほうがよいという意見もあるため、どちらに加入するかは周りの弁護士やFPの意見も仰いだほうがよいです)。
経営セーフティ共済への加入を検討する(最初は月額5000円でOKか)。

 あとは日々の仕事を行い、弁護士として生きていくだけです。この投稿は適宜、加筆修正を加えます。

無料求人広告への対応

弁護士 森田祥玄

1 全国で報道もされておりますが、名古屋でも「3週間無料掲載すると言われたので、求人広告を申し込んだら、期間経過後に自動更新の通知書と請求書が送られてきた」という相談を多数受けております。愛知県弁護士会の中小企業法律支援センターには、2019年の上半期で36件の相談があった、とのことです。
2 多くは、更新をするか否かは別途連絡をする、そのときに決めて頂ければよい、と事前に説明を受けます。しかしそもそもそのような、別途連絡する、という手紙が届かない案件もあります。また、私が名古屋の事業者でご依頼を受けた件では、確かに更新をするか否かの手紙は届いておりました。しかし、その手紙は、当該事業者の名前はほとんどでておらず、まったく関係のないパンフレット(例えば「ホームページを作りませんか」などの、ポストに入っていてもすぐに捨ててしまうようなパンフレット)に見えるものでした。非常に分かりにくく、一番後ろのほうに、求人広告のことが短く書いてありました。そして期間が経過したとして、数十万円の請求書が届きました。
3 法律的にこのような求人広告に対して支払義務がないことを主張できるのか、ですが、確かに消費者ほどの法的保護のない事業者を狙った、隙間を付いてきた商売であることは否定できません。
4 しかし、話を聞いたうえで、「結論として、このような商売がまかりとおるわけがない」という感覚を持つ案件については、私はご依頼を受け、内容証明郵便を送付しております。今のところ、私がご依頼を受けた案件は、事業者側からそれ以上の請求をされたことはありません。なお、仮に裁判になった場合には、依頼者様側に赤字にならない範囲内で対応いたします。
5 現在、全国の弁護士が同様の被害について情報を共有しております。私自身も、依頼者の皆さまからの同意を得たうえで、複数の弁護士と情報を共有したうえで、裁判に移行した場合の法律構成も協議しております。
6 求人広告を出すほど忙しい事業者の方々は、まあ、これぐらい仕方ないか、と考え支払ってしまうこともあるかもしれません。しかし、ここでの妥協が、次の被害者を生み出します。法律上必ず勝てるとお約束できるわけではありませんが、安易な妥協はせず、支払いを拒むという対応もぜひご検討ください。
7 さらに、あまりに理不尽な主張をされ、むしろ積極的に慰謝料を請求したい、という方がいらっしゃいましたら、その点もご相談ください。

職場のハラスメント対策、できていますか。

1 弁護士に相談をする労働紛争のうち、訴訟になるものは、解雇や残業代など、お金に関するものが多いのが実情です。
2 しかし、示談交渉、行政の紛争解決援助、裁判所の調停手続は必ずしもそうではありません。平成26年度は、都道府県労働局長による紛争解決援助申立の受理件数のうち、約5割がセクハラに関する事案であったとの統計もあります。
3 自分の所属する会社に限ってそのようなことはない、と思いがちですが、しっかりとした対策が必要です。セクハラは、個々人の尊厳を傷つける許されない行為であることは当然ですが、企業にとっても秩序の維持や業務への支障につながり、社会的評価に悪影響を与えます。いったん紛争化すると、両当事者が退職にいたるなど、経営に与える影響も甚大です。
4 セクハラという言葉自体が多義的に捉えられがちですが、企業側としては、男女雇用機会均等法第11条の規程が、対策の出発点となります。
(1) セクハラとは「職場において行われる性的な言動」と定義づけされますが、「職場」には、取引先であったり、出張先も含まれます。勤務時間外の忘年会などであっても、実質上職務の延長と考えられるものは「職場」に該当します。現場の総務担当者、対策を検討する企業側としては、プライベートも含め「全てが職場にあたる」という気持ちで取り組んだ方がよいでしょう。
(2) また、同条文は、「労働者」への対応を事業主に求めておりますが、ここでいう労働者には、正社員のみではありません。また、派遣労働者については、派遣元だけではなく、派遣先事業主にも、自ら雇用する労働者と同様の対策、措置を講ずる必要があります。
(3) そして「性的な言動」は、事業主、上司、同僚に限らず、取引先、顧客、学校における生徒同士も、行為者になり得ます。さらには、女性から女性へ、男性から男性へ、女性から男性へ、それぞれ行われることもあります。「これはセクハラではない」との発想自体を捨てる必要があります。
5 セクハラについては、明確な判断基準がなく、違法か否かを検討するのは難しいものがあります。それでも行政や裁判所もできる限り客観的な基準を示そうと努力はしています。まず、意に反する身体的接触については、1回でも違法性が認定されると思った方がよいでしょう。また、身体接触がなくても、明確に抗議しているにもかかわらず放置された場合も違法性が認定される可能性が高まります。基準としては、被害者が女性の場合は「平均的な女性労働者の感じ方」が基準となり、被害を受けた労働者が男性である場合は「平均的な男性労働者の感じ方」が基準となります。
6 女性の側から声をかけてきたんだから、多少は仕方ないだろう、ちょっとぐらいの悪ふざけはコミュニケーションとして必要だ、という発想は、もう許されません。下ネタは全て許されません。また、独身同士のやり取り、純粋な恋愛感情をもったやり取りの場合、会社がどこまで関与するのかは非常に難しい問題です。しかし会社側としては、上下関係のある言動は、本人の意に反している可能性があるという前提で接するべきでしょう。
7 実際のセクハラの事案では、メール、Facebookのメッセージ、LINEでのやり取り、社内でクラウドで使用しているソフトなどが証拠として出されることが非常に多くあります。「好き」だとか、「かわいい」などの言葉や、LINEでいえばハートマーク、キスマークを送るなど、普通の会話ではおよそできないようなことが、セクハラ加害者が行うことがあります。これはパワハラも同様で、メッセージのやり取りが訴訟での主要な証拠となることは多々あります。
8 また、特にパワハラ事案では、会話が録音されていることもよくあります。近時はスマートフォンを一人一台持っておりますので、常に録音機がカバンに入っているのと同じ状態となります。訴訟で会話が録音された記録が出てくることも頻繁にあります。会話を録音することは、少なくともパワハラやセクハラの被害者の立場にあり、立証のためにやむを得ないものであるのなら、違法とはなりにくいものです。マスコミに持ち込まれたり、ユーチューブにアップされることもあり得ます。特に紛争が顕在化したあとの聴き取りなどは、会話は録音されていることを前提に、どこにだしても恥ずかしくない、公正な方策をとらなければなりません。
9 パワハラの場合、セクハラよりもさらに事例の集積が乏しく、判断が難しいところがあります。また、加害者が比較的売上げをあげる人物であったり、仕事の能力はある人物のこともあります。社長そのもののパワハラが問題とされることも珍しくありません。
10 全員に同じ態度なのか、特定個人に向けられたいわばいじめのようなものなのか、1回だけなのか継続的なのか、その言葉遣い、業務時間の内外などを総合考慮することになります。また、会社にいられなくなることで訴訟に発展するリスクはありますので、「○○なら辞めてしまえ」など、退職に関連する言葉で叱責することはパワハラとして問題になりやすいと言えるでしょう。厳しく指導をするとしても、必ず仕事に関連するしかり方をしなければいけません。
11 事業主は雇用管理上、方針を明確化し、職場に周知し、また、相談窓口を整備する必要があります。
まずは意識付けを行う必要があり、そのために、方針を明確化し、労働者に周知を行う必要があります。男女による仕事の区別も許されないこと、お酒の席でのお酌の強要も許されないことなどは、年代によって常識が異なります。まずは周知徹底が必要となります。
周知の方法として、従業員心得の配布、パンフレットの配布、年に一度の講習会などが考えられます。講習会も、役職別に行うなど実効性のあるものとするなど、工夫をすることが考えられます。
12 また、直接被害には遭っていない、一般的な制度の運用に対する相談にも対応する必要があります。性別役割分担意識に基づく言動や制度(女性だからお茶を出す、女性だから受付をするなど)も、まずは自らの常識が今の社会に合致していないのではないかと疑い、幅広く意見を募る必要があります。
13 この5年で採用環境は激変し、従業員を雇用することはとても大変になりました。個々の従業員を大切にできない企業は、仕事はあるけど働き手がいない、という状態となり、市場から淘汰される時代が来ます。
14 また、特徴的なことですが、労働事件は業界内では、「○○社事件」などと、企業名を付けて呼ぶ慣行があります。労働法の教科書や判例集でも、会社名がそのまま事件名として使われ、法学部に入る人は皆さん知ることになります。また、インターネットで会社名を検索すると当該判例がヒットすることがあります。その意味でも、紛争を起こさないこと、紛争が起きた際に適切に対応することが重要になります。
 例えば「L館事件」と呼ばれるセクハラに関連する裁判は、大阪の有名な施設に関する紛争です。最高裁判所が、セクハラの具体的な態様を判決文別紙に添付したことで有名となりました。この裁判はしっかりと読むと、実は会社側はセクハラ加害者に対して厳しい対応もしておりますので、セクハラそのものを防ぐこと、実際の紛争にそれをきちんと対応すること、その両方が必要となります。
15 紛争の特徴としては、やはり問題が生じた際の対応の善し悪しが、その後の流れを左右します。被害者、加害者からの平等な聴き取り、迅速な聴き取りが必要です。また加害者、被害者の早急な異動も必要となります。そして事実が存在した場合に、加害者側に適切な懲戒処分をくだす必要もあります。人事上の措置と懲戒処分を二つ科すことも、やり方にもよりますが、直ちに違法となるわけではありません。
16 懲戒処分としてどのようなものが適切か、という相談も企業から受けます。これは難しい判断です。暴力を伴うなど、客観的に犯罪行為にまで及んでいる場合は、解雇をすべき場面もあるでしょう。その手前といえる事案の場合、出勤停止、降格などを検討することになります。大きくはまず、解雇をすべきか否か、という判断で悩むことになります。解雇までに至った場合は労働者側(加害者側)も生活がかかっており、訴訟にて解雇の有効性を争う可能性はあります。降格や出勤停止については、訴訟リスクは高くはないですが、それでも生涯の給料が相当下がる場合があります。懲戒処分としての減給は10分の1の割合でしかできませんが、降格により反射的に減給する場合、それが必ずしも違法となるわけではありません。この点の適法性は、弁護士とも相談をしながら、過去の社内の事例、そして裁判例とも比較をしながら決めていく必要があります。
17 当事務所所属弁護士は、名古屋の一部上場企業の管理職を対象としたセミナーから、従業員数名規模の企業でのコーヒーを飲みながら行う勉強会まで、幅広くハラスメントセミナーを行っております。費用は行う内容や時間で相談させていただきますが、1回5万円~10万円程度です。お気軽にお問い合わせください。

 もちろん、実際の紛争対応も積極的に受任しております(労働者側、企業側の双方からの受任実績があります)。お困りの際は、遠慮なくお声がけください。

破産手続とデビットカード

弁護士 森田祥玄

 自己破産の手続を取ると、クレジットカードを使えなくなります。しかしネット通販が普及し、クレジットカード決裁を求められる場面が格段に増えました。日々のコンビニやスーパーでの買い物にもクレジットカードを利用する人も増えています。
 自己破産をしたけど、クレジットカードがなければとても不便になるという方には、デビットカードという選択肢もご検討ください。
 先日、名古屋駅周辺にて行われたデビットカードの仕組みを学ぶ講習会に参加いたしました。デビットカードはクレジットカードではありませんが、クレジットカードと同様の使い方ができるとのことです。
 クレジットカードのように毎月引き落としがあるわけではなく、カードを使用すればすぐに口座から引き落としされます。口座に残高があれば使用できますし、口座に残高がなければ使用できません。よって、作成時に信用情報の調査はなく、信用情報機関に掲載されている方でも作成することができるのです。
 近時、多くのCMが流されており、電車での広告も多数ありますので、デビットカードという名前自体は聞いたことがあるかと思います。アメリカではクレジットカードよりも普及している決裁手段です。今後日本でも、現金決済はますます減少し、破産や民事再生手続を取ることにより、カードが持てないことによる不便さはあるだろうと思います。しかし、対応は可能になりました。
 破産や民事再生、任意整理、過払金返還請求により信用情報に名前が載ることが不安な方もいらっしゃるかと思います。もちろん、信用情報に名前が載るリスクはあるのですが、日常生活への影響は限定的です。様々な選択肢がありますし、病気と同じで、根本的な問題を取り除かなければ本当の生活の立て直しは困難となります。
 債務の問題は思い切って弁護士に依頼をした方がよい場合が大半です。一度、名古屋の弁護士にご相談ください。

税理士業務取扱通知弁護士の仕事

弁護士 森田祥玄

1 私は税理士業務を取り扱うことのできる弁護士(税理士業務取扱通知弁護士)です。日常的に税理士業務を行うわけではありませんが、税理士の先生方から相談を受け、税務調査時に意見書を作成したり、あるいは審査請求の代理を行うことはあります。
2 私の主観としては、結論が覆えることがある類型として、重加算税の賦課決定を挙げることができます。
3 通則法第68条第1項及び第2項が定める重加算税の制度は、納税者が過少申告又は無申告について隠ぺい、仮装という不正手段を用いていた場合に、過少申告加算税又は無申告加算税よりも重い行政上の制裁を科する制度です。
4 したがって、重加算税を課するためには、納税者が過少申告行為を行った、というだけでは足りず、過少申告行為や無申告そのものとは別に、隠ぺい、仮装と評価すべき行為が存在することが必要とされています。
5 参考にされるのが、最高裁平成7年4月28日第二小法廷判決です。やや古い判例ですが、今でも同判例の射程内なのか、射程外なのかが争われます。同判決は、「重加算税制度の趣旨に鑑みれば、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為が存在したことまで必要であると解するのは相当でなく、納税者が、当初から所得を過少に申告すること、又は法定申告期限までに申告しないことを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をし、又はその意図に基づき法定申告期限までに申告をしなかったような場合には、重加算税の上記賦課要件が満たされるものと解すべきである」としております。
6 この判決文は、「過少申告の意図を実現するための特段の行動があり、その行動によってその意図が外部からもうかがい得るような場合に、隠ぺい、仮装と評価すべき行為が存在する」としていますので、この、「納税者が、当初から所得を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動」に該当するかが争われます。税務署は比較的広くこの特段の行動にあたると主張をすることもありますが、同最高裁判例の最高裁判所調査官解説によると、「通常であれば保管しておくと考えられる原始資料をあえて散逸するにまかせていた場合」「税務調査に対する非協力、虚偽答弁、虚偽資料の提出等の態度を採った場合など」などを例としてあげております。税務調査に備えて虚偽の資料を作っていたり、意図的な廃棄をしていたような場合、あるいは税務調査に不誠実に対応した場合はこれに該当します。しかし日頃確定申告をしないような方がうっかり数字を打ち間違えた場合はもちろんこれには該当しません。さらには、自分で意図的に過少な申告をしていた場合であっても、何も税務署をごまかす準備さえしていないような場合これにあたらないこともあります。
7 過少申告をしてしまった人がこの重加算税を逃れるためには、とにもかくにも、税務調査に対して誠実に対応をすることです。
 リーディングケースとされる最高裁平成6年11月22日判決は、所得金額の大部分を脱漏した確定申告書が数回にわたり提出している事案にて賦課要件を満たすと判断していますが、同最高裁判例は、「確定申告後の税務調査に際して、真実よりも少ない店舗数や過少の利息収入金額を記載した本件資料を税務署の担当職員に提出しているが、それによって昭和55年分の総所得金額を計算すると、最終修正申告に係る総所得金額の約17パーセントの額(差額で約14億円少ない額)しか算出されない結果となり、本件資料の内容は虚偽のものであるといわざるを得ない」との事実が認定されています。つまり、税務調査に際しても過少の店舗数等を記載した内容虚偽の資料を提出するなどの対応をして、真実の所得金額を隠ぺいする態度、行動をできる限り貫こうとしたことも重視されています。
 過少申告をしてしまった人は、やはり、反省をし、誠実に対応するのが最も大切となります。
8 但し、誠実に対応をすることと、全ていいなりになることとはまったく異なります。税務署の調査に対して、少し違うけどまあいいかと思い異論を述べなければ、自分に不利な質問応答記録書が作成され、記録として残されます。写しがもらえるわけではなく、また、その場で一度だけ早口で読み聞かされますが、立派な証拠となります。きちんと、事実と違うところは事実と違うと伝え、重加算税の要件に関連するところは積極的に、自分に有利と思える書類も提出する必要があります。このあたりは弁護士の比較的得意とする分野かと思います。
9 また、しっかりと反省をしていることも示しながらも、時系列をまとめて、仮装、隠ぺい行為とまでは評価できないことは書面にして主張をすべきです。類似の審査請求の裁決例を調べて、比較表を作成してもよいかもしれません。租税法律主義(憲法84条)の原理原則からスタートし、最高裁判例や調査官解説を整理し、具体的な納税者側に有利な事実を拾い出し書面化する作業は、訴訟における最終準備書面作成業務に類似しており、やはり弁護士の比較的得意とする分野かと思います。
10 このような業務はスケジュールがタイトであり、うまくいかないことも多くあり、顧客や税理士の先生方の業務内容を理解する必要もありますので、弁護士としても安請け合いはできない、覚悟を持って取り組む類型の業務ではあります。しかし、どの弁護士でも一応の対応は可能な業務でもあります(通知弁護士になること自体は、手続を踏むだけで可能です)。税理士の先生方で、争ってもよいのではないかと思える案件をお持ちのかたは、交流のある親しい弁護士に、一度一緒に争わないかと打診してみてはいかがでしょうか。

交通事故をよく扱う弁護士におすすめの書籍

弁護士 森田祥玄

 私は以前、損害保険会社の案件を扱う名古屋では大きいほうに分類される法律事務所に所属しておりました。そして若い弁護士のための研修も企画し、また、保険会社向け勉強会の講師も担当しておりました。

 損害保険会社から依頼を受ける交通事故も他の案件と同様に、入所して間もない弁護士には初めて知ることが多く、戸惑うものです。そこで、私なりに、若い弁護士にいつもカバンに入れて頂き一読して頂きたい文献を、おすすめ順にまとめます。
 どの分野でも同じですが、薄めで読みやすい本で浅く広く勉強をして全体像を把握したうえで、徐々に深めていく方法がよいと思います。

1 損保会社のパンフレット
 まずもって何度も読み返して頂きたいのは、入所した事務所と取引のある保険会社のパンフレットです。一般ユーザー向けのものです。個人向け、事業者向けなど複数あります。また、自賠責保険請求用のパンフレットありますので、それも精読が必要です。
 人身傷害保険で保険料率があがると言ってしまうだとか、対物超過特約使用の交渉をしながら半年経過させてしまうだとか、ありがちなミスを防ぐには、まずは自社のパンフレット記載事項の理解が必須です。
 とはいっても、一般ユーザー向けに分かりやすく記載されていますので、ハードルは高くはない資料です。まずはここからスタートです。
 会話の基礎となる知識ですので、できる限りパンフレットが改訂されるたびに通読した方が良いです。

2 損害保険会社の約款
 パンフレット記載事項を理解しましたら、入所した事務所と取引のある保険会社の約款をざっと斜め読みしましょう。どこに何が書いてあるか分かる程度で構いません。保険会社も約款の全てを理解していることまでは期待していませんが、電話をしながらすぐに取り出せる位置に約款が置かれていることは期待されています。
 例えば契約者が破産をしたのですがまだ免責は受けていません、直接請求権を行使されているのですが、お支払いしてよいでしょうか、という質問をされた際に、その内容を即答できる必要まではありませんが、約款を開いて一緒に調べ、考えながら答えることができるレベルには到達する必要があります。

3 園部厚「交通事故物的損害の認定の実際―理論と裁判例」(青林書院)
 交通事故の紛争を扱う際になんとなく気になる論点が書かれています。車検証の所有者がリース会社となっている場合の損害賠償請求権者は誰か、だとか、弁護士費用特約に加入している場合に弁護士費用相当額損害金を請求できるか、など、かゆいところに手が届く知識が記載されています。

4 園部厚「簡裁交通損害賠償訴訟実務マニュアル」(青林書院)
 交通事故の知識がコンパクトにまとまっています。上記「4」の本の同一著者、同一出版社です。上記「4」の本と重複するところも多いのですが、それでも分かりやすく書かれており、薄めの本なので、一読をおすすめします。

5 藤井勲「新 示談交渉の技術―交通事故の想定問答110番」(企業開発センター)
 加害者側の想定問答集が記載されております。保険会社の担当者向けの本ですが、示談交渉の入門書として一読しておいた方がよい本です。

6 日弁連交通事故相談センター本部「交通事故損害額算定基準」
 青い本、青本と呼ばれる本で、多くの弁護士が読んでおくべき文献として1位にあげるのではないでしょうか。名古屋地裁交通部は赤い本を規準に算出しますが、青い本のほうが赤い本と比べて説明部分が充実していますので、通読するなら赤い本より青い本のほうがよいだろうと私は思います。多数の裁判を経験したあとに読むとまた新しい発見のある本で、改訂される度に通読をした方がよいです。
 ただなかなか開いてみると情報量が多く、通読しようとして途中で挫折し、治療費は得意だけど損益相殺は苦手という弁護士も多いのではないでしょうか。全5回ほどで友人とゼミを組み、発表担当者を決めて読み進めていけば、どうにか通読にまで至るのではないかと思います。

7 判例タイムズ社 「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準[全訂5版] 別冊判例タイムズ38号」
 青い本、赤い本と並び弁護士が読んでおく本として上位に挙げられる本です。しかし通読する本ではないように思います。前書きと各用語の説明部分は熟読し、その他の部分は斜め読みし、事案を経験しながら理解していけばよいだろうと思います。

8 東京弁護士会「こんなところでつまずかない!交通事故事件21のメソッド」
 先輩弁護士との雑談のなかで知るような豆知識が記載されています。保険会社は時効援用するのか、などがあり、さらりと読めますので一読をおすすめします。

9 高中正彦他「交通賠償のチェックポイント」
 交通事故の知識がコンパクトにまとまってあります。赤い本を濃縮し、また、あまり一般的な本には載っていない制度の枠組み等の記載もある良著だと思います。内容も正確で、筆者の専門性がかなり高い印象を受けます。

10 森冨義明他「裁判実務シリーズ9 交通関係訴訟の実務」
 通読すべき本かというとそこまでではないかもしれませんが、名古屋地裁交通部の裁判官とは、この本の記載を前提に会話を行うこともあり、私は書証として写しを提出することもよくある本です。どの論点が記載されているのか把握はしておいた方がよいです。

交通事故の本は多数存在しておりますが、まずは一般的な任意保険のルール、自賠責保険のルールを浅く広く理解することが大切です。参考にしてください。