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投資被害と回収業務

弁護士 森田祥玄

弁護士には詐欺被害に遭った、投資被害に遭ったとの相談が舞い込みます。

成年後見人業務や保佐人業務、遺言作成業務とセットとなる類型もあります。中小企業の代表者を狙う詐欺も珍しくなく、企業法務とも密接に関連します。

古くからあり、手を変え品を変え、詐欺というものは行われます。
自分は詐欺の被害に遭わないと思っている方もいらっしゃるでしょうが、社会経験がある方でも、詐欺被害に遭います。
金融リテラシーの高い職種の人でも、これで騙される人がいるのかと思えるような取引に飛びついてしまいます。
巨額の詐欺被害については、過去に投資信託や株式投資でまっとうな利益を得た経験のある人のほうが遭いやすいともいえます。
こつこつと続けた証券会社での投資信託を全て解約して、詐欺師に手渡してしまう人もいます。中小企業の社長が税金対策だと信じて大切なお金や、中には自社の株式を差し出してしまうこともあります。
このような方は、本人が詐欺の被害に遭ったことに気づいていなかったり、あるいは薄々気づいていても認めるのが嫌で第三者に相談できないままとなっている方もいます。

類型は実に様々ですが、いくつか古典的な例を挙げます。

【共通の手口】

1 詐欺被害の多くに共通しているのは、最初に配当等の名目で5万円や10万円などキャッシュバックを行い、利益が出ているように思わせる手法を取ることです。
 例えば500万円の詐欺ならば、最初の1年ほどは毎月10万円ほどの振込が継続します。そしてパタッと振込が止まり、「香港の○○さんと連絡が取れない」「議員の○○先生から少し待って欲しいとの連絡があった」「本部から少し待って欲しいというメールが来た」など、支払が止まる連絡が来ます。
 そのような連絡があったあとに、また数回振込があるかもしれませんが、その後は振込が止まります。

2 またやはり共通する手口として挙げられるのが、友人を紹介すれば紹介料が支払われる、という点です。
 その結果、友人や知人を紹介して、二次被害、三次被害を生み出します。
 自分が被害者であっても、加害者にもなり得ます。その場合は紹介者も訴訟の被告として賠償請求をされることになります。

【詐欺の実例1 迷惑メールのパターン】

皆さまも見たことがあるでしょうが、携帯電話に、「〇〇〇万円をさしあげたい」などの迷惑メールが届き、これに返事をしてしまうパターンがあります。
実際にこのメールに返信をした経験はほとんどの方はないでしょうが、このメールに返信をしますと、何回かやり取りが続いた後、「手数料」や「入会金」等の名目で、最初は少額の支払いを要求されます。
最初に払うと、徐々に求められる金額が増え、本人が詐欺であると認識するまで、支払いが続きます。
皆様はこのようなメールをみたときに、どうみても詐欺で、これに返事をする人がいるのかとの疑問を持つ方もいらっしゃるでしょうが、これに返事をする人がいるから詐欺師もメールを送るのです。
このような「どうみても詐欺」というメールは、「これに返信をする人は騙しやすい」というスクリーンニングの機能も果たしますので、詐欺師にとっても「明らかに詐欺」と思えるメールは効率がよいのです。
そして、一瞬でも本当かもしれないと信じてしまうと、自然とお金を振り込ませる流れに導かれます。
この迷惑メール関連の詐欺事案の相談は、私が弁護士になったころから十数年、一貫して存在し続けています。

【詐欺の実例2 加盟店に加入する例】

「加盟店になれば手数料が入る」と勧誘され、よくわからない加盟店に加入し、加盟料等を支払う詐欺も昔からあります。
私(弁護士)が契約書を読んでも結局何の加盟店なのか理解できない内容のことが多く、実態のないものです。
例えば「高速通信網を整備する。この代理店になる権利を50万円で売却する」などの説明があります。
そして、高速通信網の整備に東京都も愛知県も積極的に関与している、などと、愛知県知事や名古屋市長の写真付きで説明があります。
そして実際に50万円を出しますと、最初の半年ほどは数万円の振り込みがあります。
しかしその後、何らかの理由を付けて振込が止まります。

【詐欺の実例3 仮想通貨を購入する例】

時代の流れかと思いますが、仮想通貨に絡んだ詐欺も増えました。
例えば、ビットコインの次にくる仮想通貨がこれから売り出される、などと勧誘をされます。
そして新たに会員を獲得すると報酬として仮想通貨を支払う、などの内容で、実際に仮想通貨が増えていくメールが定期的に届きます。
そのようなメールを貰うと形式的には仮想通貨が増えているように錯覚をして、とても嬉しくなりますが、もちろんこれらを現金化することはできません。

【詐欺の実例4 貴金属(ゴールド等)の投資を謳う例】

昔から、貴金属(ゴールド等)への投資に絡む詐欺は存在します。
もちろん、適法な業者にとって迷惑な話で、貴金属を買うこと自体は適法です。
この手の詐欺に特徴的なのは、まっとうな投資話ではなく、はじめから違法行為を前提に勧誘をする点です。
例えば外国でゴールドを仕入れ、日本で売れば、○%の純利益が出る、などと、密輸入を前提とした勧誘がされることもあります。
警察に被害相談に行くと、「あなたも違法なことを前提にお金を出しましたよね」と言われてしまうこともあります。
実際にはお金を出す側は全体の流れも分からずに、ただ儲かるとだけ聞いて出資しますので、警察に丁寧に説明をすれば分かってはくれるのですが、警察がなかなか動いてくれない類型の詐欺です。

【詐欺の実例5 過去の詐欺被害を回復すると謳う例】
 
例えば過去に、将来必ず値上がりする未公開株がある、と言われ1000万円を出した事案があったとします。
騙されたことに気付いて、警察や弁護士に相談をしましたが、結局回収できませんでした。
ところが5年ほど経った際に、「あのときの未公開株だが、高値で購入してくれる人が見つかった」などの電話や手紙が届きます。
そして、「まとまった株式を持つ必要があるので、300万円追加購入して欲しい。そうすれば1300万円で買い取る」などと持ちかけられます。
このような、過去に詐欺被害にあった方が、その回復を謳い再度詐欺に遭うパターンは非常に多く見られます。
警察や弁護士、消費生活センターの皆さんが何度注意しても、再度お金を払ってしまう人もいます。

【回収できるのか】
 
上記の例はいずれも名古屋で実際に起き、そして私が実際に担当した詐欺被害事件を簡略化しています。
このような詐欺被害の相談を受けたときは、「回収できるのか」という問題は弁護士を悩ませます。
答えとしては、「回収できないことも多いが、回収できたこともある」という回答になります。

内容証明郵便を送った程度で返金をしてくる業者はありません。
相手が会社を名乗っていても、登記もされていない架空の会社であることも多く、訴訟を提起することも難しい場合もあります。
個人、会社、取締役、従業員等、誰を被告とできるのかも難しい判断が必要となります。
また、つらいところではありますが、友人である紹介者を被告として訴訟を提起することも珍しくありません。
直接の面談、仮差押、訴訟提起、刑事告訴等を複合的に選択しながら、少しでも回収を図っていくことになります。
また、詐欺被害の回収は時間との勝負という側面もあります。
例えば出会い系サイトにお金を費やしたが、実際に会えたことはない、サクラじゃないか、という相談を受けたとします。
この場合、出会い系サイトの運営者は、もちろんサクラではない、と反論をしますが、しかし現在も多数のユーザーがいるような場合は、紛争を避け、サイト側が早期解決を目指すこともあります。出会い系サイト(サクラサイト)、副業支援詐欺、情報商材詐欺などは、早期の弁護士への相談により返金される可能性があります。

詐欺被害は、弁護士にとっても、なかなか見通しを伝えにくい類型で、実際に回収できないことも多々あるのですが、それでも早めの相談が大切です。
ご不安なことがありましたらすぐに弁護士にご相談ください。

損害賠償と相当因果関係

弁護士 森田祥玄

 損害賠償の法律相談を受けておりますと、「この損害についても相手方に請求できますか」という質問を受けることがよくあります。
 その際に相当因果関係論の説明をするのですが、この相当因果関係という考え方は非常に分かりにくいものです。
 そこで、法律相談時に相談者の方にお見せできるように、本ブログに考え方を投稿します。

【民法416条(損害賠償の範囲)】

 まず、民法には、何らかの債務不履行や不法行為があったときに、債務者(加害者)がどこまでの損害賠償義務を負うのかを定めた条文があります。民法416条は債務不履行を想定した条文ですが、判例は不法行為の場合にも類推適用します。

(条文)
1 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる。

【相当因果関係説とは】
 学説上は様々な議論があるところですが、判例は損害賠償の範囲について、「相当因果関係説」と呼ばれる見解を採用しています。
 相当因果関係説とは、①被害者に生じた権利侵害と加害行為との間に、事実レベルでの条件関係(あれなければこれなしの関係)が認められるとともに、②被害者に生じた権利侵害を加害行為に帰することが法的・規範的にみて相当であると評価できるだけの関係(相当性)が必要とする考えです。
 民法416条1項はこの相当因果関係のある範囲の損害までを賠償範囲とすることを定めたものとされます。
 そして民法416条2項では、特別の事情によって生じた損害でも、債務者(加害者側)がその事情を予見すべきであったときは、債権者(被害者)は、その賠償の請求をすることができると定めたものとされています。
 このような相当因果関係説によれば、債務者(加害者)は、まず、民法416条1項によって、「通常生ずべき損害」、すわなち社会通念上相当と考えられる範囲の損害の賠償責任を負うと考えられています。通常生ずべき損害ならば、当事者が予見できたか否かは問題となりません。
 また、民法416条2項によって、「特別の事情」によって生じた損害であっても、「当事者」がその「事情」を(損害の発生ではなく、その「事情」を)予見すべきであったときは、やはり債務者(加害者)損害の賠償責任を負うと考えられています。
 ここでいう当事者とは、債務者(加害者)を指すものとされます。

【具体的な裁判例の紹介1】
 考え方は以上のとおりなのですが、実際の適用の場面になると、どのような判決になるのか予測が難しいのが相当因果関係論です。
 例えば「船が送電線を切ってしまった。その結果大規模な停電が起こり、列車が止まった。鉄道会社が、運賃の払い戻し費用等の損害賠償を、船の会社に求めた」という裁判がありました(東京地裁平成22・9・29判時2095号55頁)。
 判決では、東京地裁は、「相当因果関係の判断にあたっては、被告(加害者)の従業員らにその予見可能性を肯定できるかが問題となる」として、船会社従業員の予見可能性を検討し、結論としては船会社従業員の予見可能性を否定しました(鉄道会社の損害賠償を認めなかった)。
 理由としては、送電線が切断されても直ちに停電が起きるわけではないこと、停電となっても直ちに列車が運行停止になるわけではないこと、他の停電事故で運行停止になっていないこともあったこと、そして停電事故で何もかも損害を認定すると損害が無限に拡がり加害者に酷だという事実上の考慮もして、従業員らの予見可能性を否定しました。

【具体的な裁判例の紹介2】
 12歳の女児の死亡事故(交通事故)で、母親が視力低下を訴え、整体にも通うことになり、心療内科にも通院をした、という裁判がありました(名古屋地裁平成21・12・2交民42巻6号1571頁)。母親の視力低下、整体の治療費については、医師から被害者の死亡が原因である可能性が高いといわれてはいたと認定されているのですが、それでも判決では、視力低下と整体の治療費については事故との間に相当因果関係を認めることは難しいとされました。他方、心療内科の治療費については、事故との間に相当因果関係が認められるとして、請求を一部認容しています。

【相当因果関係で悩んだら】
 相当因果関係の議論は、個別の事情によって判断は異なります。
 上記裁判例の心療内科の治療費などは、大きな事故であったり凄惨な現場を目撃していれば認定されやすいでしょうが、物損事故ならば認定されにくいだろうと思います。また、短期の通院ならば認定されやすいでしょうが、通院が長引いていれば認定されにくいだろうと思います。
 また、例えば、「交通事故に遭って、車から降りた際に別の車に轢かれた(別の車は逃げており、誰か分からない)」という相談を受けたら、ぱっと聞くと認められにくいという印象は持ちますが、例えば高速道路上の事故であった、車両の損傷が大きく路肩に寄せることが困難であった、夜であり見通しが悪かった、などの事情が積み重なれば、認定されることもあるだろうと思います。
 裁判官によっても判断は異なり、第1審が名古屋簡裁、控訴審が名古屋地裁の場合で、異なる結論となったことも一度や二度ではありません。
 弁護士に相談をして、是非、ご自身で納得できる回答を得てください。

Zoomでのセミナー講師

弁護士 森田祥玄

令和2年6月17日に、名古屋のファイナンシャルプランナー(FP)の方を対象とした、セミナー講師を務めさせて頂きました。

Zoomを用いたセミナーです。
画面共有機能でレジュメを表示しながら、FPの皆さまを対象にお話しをさせて頂きました。

世の中にスマートフォンが普及し始めてから、いろいろ便利な機能やアプリを試してはやめを繰り返しておりました。
そして気がつけばフューチャーフォン(ガラケー)に戻り、結局令和になっても依頼者との連絡は電話とメールが中心でした。
遠方や海外の依頼者とはスカイプを用いて打合せをすることはありましたが、その程度で、弁護士登録後十数年、変化のない通信手段を用いておりました。
しかしZoomが今までの便利な機能やアプリと根本的に違うのは、世の中に一気に普及したことです。
ユーザーがこれだけいて、高い知名度もあります。便利なツールであることには間違いないので、Zoom、そしてチームズあたりは、今後も残り続け、日常業務のなかに組み込まれていくのではないかと思います。

セミナーのテーマは、「緊急開催:もしものときの、法人破産の基礎知識」でした。法人破産は専門性が高く、弁護士への相談のタイミングを逸すると困難な場面を迎えます。私はAFP兼弁護士という立場で、相談業務にあたる皆さまが知っておくべき基礎知識をお伝えいたしました。

セミナーをご希望のかたは、当事務所にて対応できるテーマとその費用の見積もりをお出ししますので、遠慮なくお声がけください。
もちろん、破産を考えているかたも、遠慮なくお声がけください。

冤罪で逮捕される件数

弁護士 森田祥玄

1 弁護士業務を行っていると、冤罪で逮捕・勾留される事案に、定期的に出会います。統計があるわけではありませんし、捜査側が冤罪であったと認める案件はごく例外ですので、件数は分かりませんが、私個人としては、「明らかに冤罪で、身柄拘束を受けたうえで不起訴で終わる」、という案件を数年に1回は担当します。愛知県に私と同じような街弁が1500人いるとしたら、愛知県で年間500件~700件ほどは冤罪で逮捕されているというのが私の個人的な感覚です。
2 これを多いとみるか少ないとみるかは人によるかと思います。愛知県の交通事故死者数は、ピーク時は912人、最近は減少を続け令和元年は156名でした。また、年間1万人に1人が冤罪で逮捕されるとしたら、愛知県だとだいたい700件ほどになります。刑事弁護を主要業務とする弁護士のかたは桁が違うぐらいもっとある、という感覚かもしれません。
3 冤罪で逮捕された本人は、一体何が起こっているのか分かりません。私は接見室で、「冤罪で逮捕されることも結構ありますよ。この仕事をしているとよく出会いますよ。」とお伝えするのですが、そんな実態を普通の人は知らないものですので、ショックを受け、どう対応すればよいのか分からなくなります。決してそのような実態が報道されていないわけではなく、例えば2012年に起きたPC遠隔操作事件では、無実の人が4人逮捕され、しかもそのうち2人は無実なのに自白をしています。また、2010年には検察官が証拠を偽造し無実の人を有罪直前まで追い込んだ事件も報道されています。しかし、なかなか自分のことにならないと、意識されません。我が国に住む人は、誰もが冤罪による逮捕・勾留と隣あわせの生活を送っているのです。
4 令和2年3月はコロナウイルスの影響で、顧問先や友人、知人から相談が殺到し、私も休みなく働き続けていたのですが、そのような中でどうみても冤罪と思える、不要不急に逮捕された事案を担当させて頂きました。
5 逮捕の一報を聞き当日夜遅く接見に行きますと、「あぁ、これは完全に冤罪だ」という事案でした。接見室から出て、担当警察官に、どうしてこれで逮捕できるのだ、と抗議しますと、「逮捕は裁判官が認めたものだ」との回答でした。それはそうですね。裁判官には是非とも、冤罪での逮捕・勾留に抗議を受けた警察官は、「裁判官が認めたものだ」と反論をすることを知って頂きたいものです。
6 その後、裁判官に対して勾留すべきでないとの意見書を出し、勾留に対する準抗告、特別抗告、勾留理由開示、勾留延長に対する準抗告、特別抗告を行いましたが、結局身柄拘束は続き、最終的には不起訴処分で終わりました。
7 今回は勾留理由開示という、あまり行われない手続を行いました。裁判官は紋切り型の説明をするだけで意味のない手続だという意見もありますが、今回の裁判官は誠実に、世の中の人は誰もが犯罪を行った可能性がある、という程度の説明はしてくださいました。捜査側がどのような説明をしているのかを知ることはできますし、今回は、「本当にこれ以上証拠はないのだな」ということを知ることもできましたので、場合によっては申し立ててもよい手続だろうと思います。
8 なお、あまりにやり方がおかしいため、不起訴処分後に担当警察官に改めて抗議をしようとしましたら、担当者はこの春で異動になりました、との回答でした。異動前に案件を処理してしまう、ということだったのでしょうか。
9 依頼者のかたには、周りの人に、冤罪での逮捕というものが世の中には多数存することを説明して欲しい、との要望を受けており、このブログ記事を投稿いたしました。冤罪で逮捕される世の中であることは、警察も、検察官も、マスコミも、弁護士も、よく知っていることです。ロシアンルーレットのように一部の人が犠牲になります。職業や資産を問わず冤罪の犠牲になり得る点は公平とさえ言えるかもしれません。個々の警察官や裁判官が悪意を持っているわけではなく、誰が悪いのか、何を直せばいいのか分からないまま、そのような運用が続いております。まずは、多くの人にそのような実態があることは知って頂いた方がよいだろうと思います。

インターンシップ・エクスターンシップ生の受け入れ

弁護士 森田祥玄

令和2年2月の2週間、私のもとへ名古屋地区の法科大学院の学生が、エクスターンシップ生として来て下さいます。
私は平成28年、平成29年、平成30年、令和元年と4年間、名古屋地区の法学部の学生のインターンシップ生を受け入れておりますが、今回初めて、法科大学院生の学生を受け入れます。
インターンシップとエクスターンシップがどう違うのかですが、インターンシップの大きな目的の1つに、志望する職業を知ることで、ミスマッチを防ぐことがあります。他方、エクスターンシップは、既に志望する職業(私のもとに来て下さる方の場合は弁護士)が決まっており、当該職業に対する理解を深めることが目的とされております。
インターンシップに来た法学部の学生は、「弁護士は毎日示談交渉を行うのだな。心が疲弊する仕事だな、やめておこう」と選択することができますが、エクスターンシップの学生には、「弁護士は毎日示談交渉を行うのだな。やりがいのある楽しそうな仕事だな」と思って頂く必要があります。進路選択のためではなく、既に選択した進路(弁護士)について理解を深めるという点に、特徴があります。
インターンシップやエクスターンシップを受け入れることは弁護士にとって光栄なことであり、周りの弁護士も、インターンシップやエクスターンシップを受け入れることができるということは、きちんとした弁護士なのだろう、との評価を与えてくださっていると(勝手に)思っています。少なくとも私は、インターンシップやエクスターンシップを受け入れている弁護士のかたに対してそういう思いを持ちます。
私は昔ながらの示談交渉と訴訟手続・調停手続を行う弁護士ではありますが、数年後には様変わりしている業務を数年後に弁護士になるかたに見ていただいても仕方がないのではないか、という悩みはあります。
弁護士が日々扱う紛争類型も、時代の流れにより大きく移り変わりがあります。私が弁護士になった当時は過払金返還請求や破産申立の件数が多数ありましたが、現在は減少しております。また、交通事故の裁判は今も増加傾向にありますが、自動運転の影響が何年後に出てくるのかの予想は難しいところがあります。今は相続や離婚に注力する弁護士が増えておりますが、裁判所が発表する統計上は件数としてそれほど増えているわけではありません。他方、世界の人口は未だに増え続けており、従前とは異なる弁護士需要が存することもまた事実です。
また、私の業務は移動時間が多くを占めております。現在担当している裁判だけでも、名古屋だけではなく、一宮や春日井、津島、瀬戸等の裁判所の案件もあります。また、岡崎、半田だけではなく、岐阜や四日市、津の裁判所の案件も係属しております。移動時間が多いという私の業態は、私は電車で本を読めるのでとても好きな業態なのですが、現在進められている裁判のIT化で数年後には大きく変わるだろうと思います。


エクスターンシップに来て下さる方には、将来の弁護士業界が様変わりしている前提で、将来も変わらないであろうと私が予測する弁護士業務の楽しさやつらさ、心構えをお伝えできればと考えております。


依頼者の皆さまにご迷惑をお掛けすることがないよう責任を持って担当させていただきますので、何卒ご理解の程、お願いいたします。

【弁護士向け】民法改正への対応

弁護士 森田祥玄

令和2年(2020年)4月に、民法(債権法)がおよそ120年ぶりに改正されます。
民法が制定されたのは明治29年、1896年です。
廃刀令が発布されたのが明治9年、るろうに剣心の物語の始まりが明治11年、日清戦争開始が明治27年ですので、いかに古くから使われている法律だったかが分かります。別の視点からは、いかによくできた法律だったかが分かります。
それ以降もまったく改正がなかったわけではなく、平成16年(2005年)には民法をひらがなにするなどの改正が行われました。しかし今回の改正は、債権法の歴史の中ではもっとも大きな改正になります。
弁護士の皆さまの対応も、せっかく民法を勉強してきたのにどうしてくれるんだと憤りを感じながらも弁護士会の研修に出席する方、もう一度法科大学院に入り直したいと現実逃避をされておられる方など、様々かと思います。
泣いても笑っても、4月はやってきます。4月以降に賃貸借契約を締結する場合には、極度額を記載しなければ連帯保証契約そのものが効力が生じません。4月以降に発生した交通事故については遅延損害金や逸失利益の計算が異なります。弁護士会で開かれる研修を受け、自分で勉強して、どうにか対応していくしかありません。

そこで私が現在までに自分で購入させて頂いた書籍を紹介させていただきます。ごく普通の名古屋の街弁の、2020年1月現在の感想ですが、参考にしてください。偉そうに書評として書いておりますが、ここに記載している本はいずれも私が購入した方がよい、素晴らしいと思った本です。

【東京リーガルマインドLEC総合研究所「2020年版 司法試験&予備試験 完全整理択一六法 民法」】
最初に紹介するのはやはりこの本でしょうか。若手弁護士ならばご存じかと思いますが、司法試験・予備試験対策用の逐条解説テキストです。通読する本ではありませんが、民法の条文に出会う度に択一六法を読む、という作業を繰り返せば、理解が進みます。なりふりかまっていられない実務家にはありがたいテキストです。

【黒松百亜先生「マンガでわかる!民法の大改正」】
 アマゾンで「マンガ 民法改正」で検索をして最初に出てきた本です。2019年7月に第2刷も発売されました。もう少し条文も書いて頂けるとありがたいのですが、弁護士が主要なターゲットではないので仕方ないですね。自分で条文を引く練習にはなります。数時間で読めます。

【アガルートアカデミー「マンガでやさしくわかる試験に出る民法改正」】
 アマゾンで「マンガ 民法改正」で検索をして2番目に出てきた本です。やはりすっと読めます。私は知りませんでしたが、今はアガルートアカデミーという司法試験予備校があるそうです。

【道垣内弘人先生「リーガルベイシス民法入門第3版」】
 民法を初めて学ぶ人でも読める、民法の入門書です。顧問先法務部の方との民法勉強会にこの本をテキストとして指定させて頂いてたことがあり、私にとっては読みやすい慣れている本です。冒頭部分は特に入門的な内容が続き、弁護士にはつらいかもしれません。思い切って前半3分の1を飛ばして、契約部分から読むと良いかと思います。私は長らくお世話になっている入門書で、民法の入門的内容を教える必要のある人にはおすすめです。

【阿部・井窪・片山法律事務所「契約書作成の実務と書式 — 企業実務家視点の雛形とその解説 第2版」】
 民法の本ではありませんが、この年末年始で通読させて頂きました。旧法を現行法と述べている点からして、第2刷等で修正を重ねていく前提のように思います。読者の期待値が高すぎたのかアマゾンのレビューは辛口なものもあり、確かに急いで発刊をした印象がありますが、それでも契約書修正関連では類書は少なく、私は現段階では手元に置いておいたほうがよい本だと思います。

【弁護士法人飛翔法律事務所「改訂3版 実践 契約書チェックマニュアル」】
 やはり民法の本ではありませんが、手元においたほうがよい本として挙げさせて頂きます(私も第3版は通読はしておりませんが)。第2版を、私が事務所内で若手弁護士に契約書チェックの勉強会を開く際に参考資料として利用させて頂いておりました。

【嶋寺基先生「新しい民法と保険実務」】
 新しい民法を、保険実務という切り口からまとめた本です。切り口を変えた本を読むことで民法を立体的に理解できるという点から、保険実務をあまり扱わない弁護士にもおすすめです。保険実務を扱う弁護士は一読した方がよいだろうと思います。

【潮見佳男先生ほか「Before/After 民法改正」】
 この本がもっともおすすめで、4月以降当分、共通言語の基本書となるのではないかと思います。事例があったほうが頭に入りやすく、1つの事例に対する解説もコンパクトですので、読み進めることができます。この本を読みながら、条文を引くことで、一歩深い理解に到達できる…気がします。私がこの本を読んだのは2年以上前で訂正もあるようですので、改めて最新版を購入し直し、4月までに読み直す予定でおります。

 以上、業界人向けの記事です。皆さま、4月に向けて共に頑張りましょう。

控訴審で逆転できるか

1 弁護士をしていると、第1審でどうしても納得できない判決がでることがあります。この場合は控訴をして、控訴審での逆転を目指すことになります。
2 私が名古屋高等裁判所で結論を覆して頂いた例をいくつか抽象化してご紹介いたします。

ア 別居後数ヶ月後に不貞があった事案で、不貞慰謝料を請求いたしました。名古屋地方裁判所では、別居後数ヶ月後の時点で婚姻関係が破綻していたとして、慰謝料請求が棄却されました。
私は事案全体からみてこの程度では婚姻関係は破綻されたとは認定されないだろうと予想しておりました。
第1審判決後、再度、別居後の二人の生活を陳述書やクレジットカード明細等で整理し、別居後の婚姻関係破綻に関する裁判例との比較を表にして作成し提出いたしました。
その後、名古屋高等裁判所にて慰謝料請求を認容して頂きました。
本件は、第1審の裁判官の判断が特殊だった、と言わざるを得ない事案でしたが、裁判の結論予測の難しさを改めて知る事案でした。
イ 財産分与を求めている事案で、婚姻前の定期積金をどのように扱うかが争点となった事案でした。一昔前までは、離婚時の財産分与は「別居時の預貯金」から「婚姻時(あるいは同居時)の預貯金」の金額を差し引いて算出する、とされておりました。しかし近時の名古屋家庭裁判所は、婚姻期間が一定期間あれば、「別居時の預貯金額を2で割る」という運用をしており、婚姻時の預貯金を差し引かず計算をする傾向が顕著です。たまにしか離婚を扱わない弁護士は戸惑うこともあるのではないでしょうか。婚姻時の預貯金については、普通預金は差し引かれないことが多いのですが、まったく動かしていない婚姻時からある定期預金は差し引かれるのが通常です。
今回争点となったのは、普通預金と定期預金の間のような性質を持つ、定期積金の扱いでした。
定期積金は、出し入れ自体は自由にできるのですが、普通預金のように生活費の自動引き落とし口座にはできません。普通預金と同じ扱いにするのか、定期預金と同じ扱いにするのかが争点でした。
名古屋家庭裁判所では、定期積金も自由に引き出し生活費に充当できる点を重視し、普通預金と同様、婚姻時の残高を差し引かずに計算すべきだとの判決を出しました。
私は婚姻時に多額の残高がある定期積金を、離婚時に二人で分けるという結論が明らかにおかしいだろうと考え、控訴をいたしました。
あくまで理論的な争点なので新しい証拠を控訴審で提出したわけではありませんが、控訴理由書では、「結論がおかしい。落としどころとしておかしい」、という主張を延々と記載いたしました。
名古屋高等裁判所でも、定期積金は名古屋家庭裁判所と同様に、やはり普通預金と同様に考えるとの判断が示され、この争点では主張は認められませんでした。ところが、通常5:5とされる寄与度を修正し、判決文の最後の数行で、総合的に考慮をすると寄与度を当方6:相手方4に修正すべきと記載され、最後の数行で当方の主張に沿う結論を導いて頂くことができました。
ウ 債権回収の原告側の事案で、相手方の法人は事業を新会社に譲渡し、債務のみを残して法的な破産手続も取らずに放置をしている事案でした。そこで、新会社に対して債務を引き継いでいるだろうと主張し、訴訟を提起いたしました。名古屋地方裁判所では、別法人であることを理由に請求が棄却されましたが不当だと考え、控訴をいたしました。控訴理由書でも、いかに結論としておかしいか、を記載したところ、債務を引き受けたとの判断を頂くことができました。
エ 在留特別許可を求め争った事案で、国側の主張をそのまま採用した第1審判決を覆し、控訴審にて、あまりに道義に反する、日本にいてもいいだろう、との判決を頂くことができました。

3 この記事をお読みの方の中には、第1審判決でこれはおかしい、という判決となり、控訴審での逆転を目指す人もいらっしゃるかと思います。依頼者の立場からどう振る舞えばよいかは答えはありませんが、私なりの考えを記載します。
ア まず、弁護士を変更すべきかという問題に直面します。私の体感としては、第1審を担当した弁護士を信じて依頼を続けた方が、控訴審で逆転できる確率はあがるだろうと思います。第1審から継続して事情を把握している弁護士と、控訴審から担当する弁護士とでは情報量が違います。どのような優秀な弁護士でも、不本意な判決を受けることはあります。それまでの弁護士としての活動を見て、信頼してよいと思えるならば、依頼を継続したほうがよいことがどちらかといえば多いだろうと思います。
イ 法律論は弁護士に一任するしかありませんが、「結論が不当だ、常識的に考えておかしい」という点は、弁護士よりも依頼者のほうが詳細に分かっていることも多くあります。なぜ第1審判決に納得できないのかを深く自分なりに掘り下げ、弁護士に伝えるべきだろうと思います。但し、相手方の性格がひどい、という主張など、明らかに関係のないことを一生懸命書いても、結論に影響はありません。この取捨選択は難しいので、「法律論はともかく、結論が不当だ」という主張や、第1審判決に対して言いたいことを全て、Wordやテキストファイル形式にして担当弁護士にデータで渡し、「弁護士さんが必要と思うところを使って欲しい」と伝えるのが、担当弁護士としては助かります。
この点はどうみても関係ないかな、弁護士さんが困るかな、と思うこともあるかと思いますし、実際、これは関係ないな、と思うような主張もあるのですが、あまり遠慮していては、第1審判決を覆すことはできません。「主張の取捨選択を全て弁護士さんに一任する」と伝えたうえでなら、自分がおかしいと思うことをデータで弁護士さんにお渡しすることは、裁判にマイナスになることはありません。
ウ また、きちんと事案や問題点を伝えきっているかも再度確認をすべきです。交通事故の事故態様を争っているのならば、現場の地図を作る、ミニカーを使って再現をするなど、分かりやすく主張を作る必要があります。また、弁護士に分かってもらうのではなく、裁判所に分かってもらう必要がありますので、動画で撮影してCDにする、プリントアウトしてA4で提出できる形にするなど、担当弁護士にどのような形ならば裁判所に提出しやすいかを尋ねるべきです。
 私はよく、「素人でも分かるように」と依頼者に伝えます。控訴審裁判官は大量の案件を同時に抱えていますので、よく分からない単語や業界慣行を自分で調べてくれると期待してはいけません。よく分からないな、と思ったら、そのよく分からないところは参考にされずに判決が書かれると思った方がよいです。
一体何が問題なのか、なぜ第1審で負けたのかを自分で考えて、担当弁護士に伝えて、一緒に、一読して分かるように逆転に向けて書類作成を行います。
エ あとは、諦めないこと、が大切かと思います。前述の在留特別許可の適否を争った裁判では、第1審で不要として採用されなかった証人の申し出を、一応控訴審でも申し出てみましたら採用され、結論が覆りました。新たな証拠申し出や検証申し出など、何かできることがないか、担当弁護士と相談をすべきです。
オ 弁護士費用や実費という側面も、担当弁護士に率直に相談をしたほうがよいだろうと思います。弁護士の仕事は、ご依頼を頂いた段階ではどの程度時間や実費がかかるか見通しを立てにくく、事案によっては、弁護士が依頼者の経済事情に配慮して、お金のかかる立証方法を提案できないこともあります。交通事故の事故態様や、怪我をした場合の後遺障害の程度などが典型ですが、50万円かければ私的な鑑定を行える場合もあります。金銭面でのフォローができないかも、率直に相談をしてみた方がよいでしょう。
4 もちろん、うまくいく事案ばかりではありません。第1審敗訴後、全力を尽くして控訴理由書や新たな書証を提出しても、控訴審判決にてごく短く第1審判決がそのまま踏襲されることも珍しくありません。控訴審に至っても、結局は数人の裁判官だけで判断をするシステムであり、自分が真実と考えている主張が採用されないことも、残念ながらあります。白か黒か判断ができない事柄に1つの結論を示すのが民事の裁判ですし、裁判官も自分の判断が全て真実だと思って判決を書いているわけではありません。これはもう、控訴審での敗訴判決を受領したら、所詮は人間が決めるシステムとはこの程度のものだ、という心の割り切りが必要です(そうしないと、理不尽さに心の平穏が保てません)。

5 納得できない第1審判決を受け取った方はつらい思いをされているかと思いますし、簡単に覆るものでもありませんが、今まで共にたたかった弁護士さんとともに、今一度、頑張ってください。

真実ではないと思える主張

弁護士 森田祥玄

弁護士の仕事をしていると、定期的に、争点は「嘘をついているか否か」という類型の裁判に出会います。
弁護士も裁判官も、嘘をついているかどうかを判断する特別な技能を持っているわけではありません。
嘘のように思える主張であっても真実であることも多々あり、その逆もあり、我々を日々悩ませます。
私が考える、裁判官に嘘だと思われやすい主張、というものを、交通事故と不貞慰謝料を例に簡単にまとめてみます。
話し方のクセや性格もあり、一概にはいえませんので、あくまで一般論です。

【客観的な証拠と矛盾している】
客観的な証拠との矛盾がある場合、裁判所はその矛盾部分以外の供述全体についても、疑わしいと考える傾向にあります。
当たり前のように思われますが、人間の記憶は徐々に薄れていきますし、違う記憶がすり込まれることもあります。
例えば交通事故の裁判で事故態様を争っているときに、「事故のあと警察とは5分ほどしか話していない」と言っていたのに、実況見分調書には60分ほどかけて警察に事故態様を説明したことになっていることがあります。
警察が意図的に長く書いていることもあるでしょうが、記憶のほうが間違っていることもあるだろうと思います。
事故直後はパニックになっていて、夜であったり、疲れもあり、正確に記憶できていないことも多々あります。
裁判で尋問を行う頃には事故から1年以上経過しており、はっきりとは憶えていないことも多いかと思います。
しかし客観的な記録と明らかに違うことを述べている場合、ほかに決定的な証拠がなければ、このようなことでも不利な認定をされる理由の1つとなります。
尋問では記憶のとおりに述べるしかないのですが、早い段階で何が起きたのかを時系列ごとに早めるにまとめる必要があります。
また、事故前後30分の出来事は分単位で表にしておいたほうがよいでしょう。

【動かしがたい事実と整合しない】
利害関係のない第三者の目撃や、多数人の意見が合致する事実と異なる主張は、証言全体の信用性が下がります。
例えば多重衝突事故で、無関係の当事者が雨だったと言っているのに、本人が晴れていたと言っているような場面です。
交通事故の事故態様そのものとは関係がなくても、供述全体の信用性はやや下がります。

【関連の薄いところで嘘をつく】
例えば交通事故で、「過去にも交通事故に遭ったことがありますか」と相手方弁護士に聞かれ、本当はあるのにないと答えてしまう人がいます。
あると答えると何か不利になるのではないか、との気持ちが働きますし、その気持ちは分からなくはないです。
しかし過去の交通事故と今回の交通事故の関係が薄くても、客観的な事実と異なることを言ってしまうと、裁判官は供述全体の信用性を疑います。

【発言に具体性、一貫性、合理性がない】
交通事故の裁判で事故態様を争っているときを例にしますと、事故態様を尋ねたら、「もう、わーとなって、ドンとあたって、気がつけば警察が来ていました」など、具体的に回答ができないことがあります。
実際には一瞬のことなので覚えていないこともあるだろうと思うのですが、有利・不利でいいますと、やはり交通事故などの特殊な記憶に残りやすい事柄について、あいまいな回答をしていると、不利な認定がなされます。
このような場合、どう対応するか弁護士を悩ませるのですが、覚えていないのに記憶を作り上げるわけにもいきませんし、作り上げた記憶はどこかで矛盾が露見します。
覚えていないなら、当初から一貫して覚えていないと主張し続けるのが結果的にはまだ無難な判決を導くように思います。

【結論をいわず証拠の提出を求める】
例えば弁護士から内容証明郵便で不貞慰謝料を払うよう求めると、「証拠を出してください。」と主張する人がいます。
不貞はあったかなかったかの2択であって、証拠があるかないかで結論が変わるものではありません。
本当にしていないのなら証拠はありませんので、証拠を出してくださいと求めること自体が、証拠が存する可能性を認めているようなものです。
現実には例えばとても親しいけど不貞はしてないという場面もあり、まずは証拠を求めること自体は間違ってはいないのですが、開口一番証拠はあるのか尋ねるのは、やはり疑わしいという印象を持たれてしまいます。

【結論をいわず一般論だけを答える】
弁護士から手紙を送ると、「ぼくのようなおじさんを、あのような若い子が相手するわけがない」というな反論がなされることがあります。
この反論自体は皆さんがするものなのですが、一般論だけが続くと徐々に疑わしくなります。
「していない。」とまず言い切ってから一般論を話すのならまだ分かるのですが、「ぼくのようなおじさんをあのような若い子が相手するわけがない」「ぼくのような子どももいて立場もある人間がそのような行為に及ぶわけがない」と主張をし、「それで認めるのですか、認めないのですか」と聞かれてはじめて「認めない」と回答をする場合は、なぜ最初に結論を言えないのだろうかと疑わしく思われてしまいます。

【本論か外れ、揚げ足を取ろうとする、些細なことにこだわる】
弁護士から手紙を送ると、「なぜ弁護士なのに内容証明郵便ではなく普通の郵便なのだ」「名古屋の弁護士なのになぜ東京から内容証明郵便が届くのだ」「おれは名古屋の弁護士会の会長を知っている」など、本論と関係のないどうでもよいところにこだわる人がいます。
関係のないところにこだわる場合、本論に入れない理由があるのではないかと疑わしく思われてしまいます。

本当のことを言っているのか否かを判断するのかは実際には大変に難しいものです。
実際にはどちらかが嘘をついている事案でも、どちらも本当のことを言っているようにみえて、決定的な決め手がない、という案件も多数あります。
このような場合、不法行為に基づく損害賠償などでは、請求する側が立証する責任を負う(立証できなければ(例えば浮気をしているのかしていないのか、結局よく分からなければ)、請求する側が負ける)という建前になっています。
しかし実際の判決では、裁判官が、こちらの主張のほうがより一貫している、虚偽の主張をする理由がない、などの、抽象的な理由をつけて、どちらかの言い分が正しいと決めることが多いという実態もあります。

司法権とは、具体的事件に法を適用し、事件を終局的に解決する国家作用と言われています。
意見の分かれる、どちらとも取れる事柄に対しても、むりやり判定をして、紛争を終わらせるのが裁判の役割なのです。
本当のことを言っているのに信じて貰えないことはとてもつらいことで、実際に信じて貰えないまま判決になることもあるのですが、民事の裁判とはそういうものだ、という割り切りも必要になることがあります。
事実関係を争っている、どちらかが嘘をついている、という紛争も早期の弁護士の関与が必要となる類型です。
お困りの際は弁護士にご相談ください。

弁護士業務とセカンドオピニオン

弁護士 森田祥玄

1 一度弁護士に依頼をしたなら、原則として、依頼をした弁護士を信じて手続を進めていくほうがよい結果になるだろうと思います。
2 しかし、自分が依頼をした弁護士の進め方や処理方針に疑問を持ったときは、セカンドオピニオンを仰いで頂いても構いません。
3 セカンドオピニオンを仰ぐときは、現在依頼をしている弁護士にその事実を伝えなくても構いません。手元の資料をもとに、疑問点を整理し、これ以外の方針を採り得ないのか、納得いくまで質問をしてください。
4 自分の依頼者がセカンドオピニオンを仰ぐことについては、快く思わない弁護士もまだいるかもしれません。しかし若い弁護士を中心に、それは依頼者の当然の権利だと考える弁護士も増えました。私個人としては、仮に自分の依頼者が他の弁護士にセカンドオピニオンを仰いだとしても、良くも悪くも特別な感情は持ちません。ご希望があれば別の弁護士に相談をしやすいように資料をまとめて、争点とセカンドオピニオンを仰ぎたい点を整理して、お渡ししても構いません。
5 セカンドオピニオンを受ける側の弁護士の立場に立ちますと、まず、現在担当している弁護士に比べて、圧倒的に情報量が不足しています。1年ほど裁判をやってきた案件のセカンドオピニオンを、30分(税抜きで5000円)の法律相談で行うのは、困難を伴います。セカンドオピニオン用に数時間かける必要があるのが通常で、事案にもよりますが、例えば名古屋市の各区役所の無料法律相談(通常15分~20分程度)でセカンドオピニオンを仰ぐのは、現実的ではないことも多いかと思います。記録を検討し意見を伝えるための弁護士費用をいくらに設定するかは事案によりけりとしか言いようがありませんが、私なら、例えば3時間ほどの検討時間と1時間の打合せ時間を要する案件で10万円(税別)ほどでしょうか。弁護士のタイムチャージ(1時間に要する費用)は弁護士によって異なりますが、概ね2万円から3万円(税別)前後かと思います。「例えば5万円でできる範囲内で答えて欲しい」などの要望にも対応できることもありますので、予算も率直にお伝えください。
6 セカンドオピニオンで悩ましいのが、記録にあらわれない、現在担当している弁護士しか持っていない情報があることです。例えば裁判手続では裁判官は、将来的にどのような判決になるのかはっきりということはあまりありません。しかし、目線、態度、声等、体全体で有利・不利の雰囲気を出すことがあります。それは実際に裁判所に行く担当弁護士でしか感じ取れないもので、その情報がないままアドバイスを行うと、望まぬ結論になるかもしれません。
7 よくあるセカンドオピニオンの類型としては、「担当弁護士が和解すべきと私を説得してくる。私は和解に納得できていない」というものがあります。このような思いを頂いたなら一度はセカンドオピニオンを仰いで頂いた方がよいだろうと思います。しかし、実際には、「私も担当弁護士のおっしゃるとおり、和解をした方がよいとは思いますよ」と回答する場面が多いのも実情です。どこで納得をするかの問題でもありますので、さらにサードオピニオンを仰いでもよいのかもしれません。
8 過去にセカンドオピニオンから受任をした経験もまったくないわけではありません。交代した方がよいと思える類型の1つは、明らかなミスマッチがあると思える場合です。相談者はメールでのやり取りを望んでいるのに、郵送かFAXしか使えない弁護士ならば、交代を検討した方がよいかもしれません。また、既に担当弁護士との信頼関係が破綻しており、担当弁護士も交代を希望していると思われる場合も、セカンドオピニオンから受任をした方がよい類型かと思います。
9 従前は、セカンドオピニオンの相談を受ける際は、担当弁護士に不満を持っているのが通常でした。しかし最近は、担当弁護士に特段の不満はないのだけれど、さらにいいアイデア、提出できる証拠や文献がないかということを聞きたい、というご相談もあります。セカンドオピニオンが身近になったということかと思います。なかなか短い法律相談の時間で役に立つアドバイスをするのも難しく、また、受任を前提としないご相談にも、もちろん費用は発生するのですが、ご希望がありましたらそのような需要にもお応えできるよう、見積もりをお出しいたします。
10 担当弁護士の知識不足、力不足と思われる事案は、セカンドオピニオン全体からすればごくまれです。しかし裁判手続は一生に何度もあるものでもありませんので、ご自身の案件がその「ごくまれ」に該当するのか否かも、確認をしたほうがよいだろうと思います。
11 セカンドオピニオンを仰ぎたい、というご希望にも当事務所の所属弁護士は対応いたします。その際の費用も見積もりはいたしますので、お気軽にご連絡ください。

退職代行業務

1 この数カ月ほど、パワーハラスメントを受けたという労働者側の案件にかかわりました。ご本人はこのブログに経過も含め全て実名で記載してもよいとおっしゃっているのですが、炎上させてもご本人にもいいことはないので、雑感だけ記載します(この投稿内容もご本人の了承を得ています)。
2 「パワハラ」については、労働者側での相談自体は少なくありません。しかし裁判まで起こす案件は全体的には多くはありません(多くはないだけで、実際に訴訟を提起することはあります。現在進行形でもパワハラを理由に慰謝料を請求している裁判を担当しております)。
3 あまり多くない理由の1つは、裁判所が認定する慰謝料が決して大きな額ではないことにあります。今回も、これは違法性は認定されそうだという印象は受けましたが、慰謝料額は大きくはならない案件でした。その結果、訴訟提起までには至らないとの結論に至りました。
4 精神疾患を患い、働けなくなったような場合は、損害賠償額が高額になることもあります。労災手当あるいは傷病手当金を受給しながら、訴訟を行う経済的メリットのある案件もあるでしょう。しかしそこまでに至らない案件なら、なかなか、経済的なメリットだけを考えると訴訟を提起するのは躊躇します(もちろん、それでも訴訟提起を望まれるならば、訴訟を提起いたします)。
5 また、もう1つの訴訟にまで至らない理由は、パワハラを受けている労働者の弁護士に対する需要は、そのパワハラから逃れることにある点です。パワハラといっても、会社という小さな世界で行われていることであり、退職してしまえばいいだけの事案もあります。
6 近時、退職代行を業とする株式会社、あるいは労働組合が広告を出しています。非弁行為にあたるか否かという議論はありますが(私は少なくとも株式会社は非弁行為にあたると思いますが)、ただ退職の意思表示だけをして欲しいという労働者の需要があるのは確かです。
7 そうはいっても、生活もあり、簡単には退職できないということも多いでしょう。そのような場合、退職後のライフプランの設計を一緒に考えることも有益です。今までの収入が途絶えるのですから、人生設計を見直す必要があります。有休消化の概念を説明し、退職手当を貰えるまでの預貯金があるのかを確認し、毎月の引き落とし、携帯電話や生命保険の固定費の見直しも行う必要があります。実家に甘えることができるならば、一人暮らしをやめて実家に帰るという選択肢を取ってもよいでしょう。退職時期も「次の賞与まで」など、ある程度計画を立てる必要もあります。
8 ご相談を受けた案件は、名古屋では比較的社会的には信頼のあるほうに分類される会社でしたが、そのハラスメントは続き、終わりが見えませんでした。結局、会社側に弁護士が介入することを伝えたうえで、事務的に退職手続を淡々と行いました。悔しい思いをされてはいましたが、会社という小さな世界から離脱することで、終結いたしました。
9 会社でつらいことがあった際に、弁護士に相談をしたからといって、必ず訴訟等の法的手続に移行していくわけではありません。何をどこまで望まれるのかを弁護士と一緒に整理しましょう。