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時効の更新・完成猶予について1(弁護士・法律学習者向け)

弁護士 岡田貴文

 一般の方というよりは、弁護士や法律学習者向けの記事になります。

 2020年4月施行の改正民法で登場した新しい概念として、「時効の更新」「時効の完成猶予」があります。
 分かりやすくなったのですが、旧民法を勉強されていた方からすると逆に混乱してしまうかもしれません。
 その原因は、「時効の『中断』が『更新』に、『停止』が『完成猶予』に改められた」等と解説している書籍があるためです。
 旧民法における中断・停止の概念と、改正民法における更新・完成猶予の概念を結びつけて理解しようとするのが失敗のもとなのですね。

 改正民法を作成した方々による書籍「一問一答 民法(債権関係)改正」の記載を要約すると、以下のとおりです。

・旧法における中断には、時効が完成すべき時が到来しても時効の完成が猶予されるという「完成猶予」の効果と、時効期間の経過が無意味なものとなり新たに零から時効期間を進行させる「更新」の効果とがあった。
・しかし、旧法は、これらの異なる効果を合わせて「中断」という一つの概念を用いていたため、意味内容が理解しにくかった。
・また、債務者が権利を紹介した場合には「更新」の効果のみが生ずるが、履行の催告は「完成猶予」の効果のみが生ずるなど、多岐にわたる中断事由の中には、時効の「完成猶予」の効果と「更新」の効果のいずれか一方が生ずるにとどまるものもあったため、中断の概念の理解は困難なものとなっていた。
・そこで、新法においては、時効の中断について、その効果に着目して時効の「完成猶予」と「更新」というその効果の内容を端的に表現する二つの概念で【再構築】した。
・また、時効の停止についても、その効果の内容を端的に表現する「完成猶予」という概念で【再構築】した。

 つまり、時効の「完成猶予」と「更新」という概念は、新たに【再構築】された概念なのです。
 だから、旧民法における時効の「中断」や「停止」と関連付けて理解しようとすると、こんがらがってしまう訳です。

 ですので、改正民法において時効の「完成猶予」及び「更新」を理解するポイントは、旧法で勉強したときの、「あれは中断、これは停止…」という知識を、とりあえず一回すべて忘れてみるということだったりします。

 次の記事に続きます。

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