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時効の更新・完成猶予について3(弁護士・法律学習者向け)
弁護士 岡田貴文
前の記事で、改正民法では、権利者が権利行使の意思を明らかにしたと評価できる事実が生じた場合を完成猶予事由とし、権利の存在について確証が得られたと評価できる事実が生じた場合を更新事由とした、というお話をしました。
では、裁判上の請求以外の完成猶予事由及び更新事由も見てみましょう。
【強制執行等による時効の完成猶予及び更新】
これも裁判上の請求と同じです。
強制執行等の手続を行うと、終了するまでの間は、時効の完成が猶予されます(民法148条1項「…時効は、完成しない。」)
そして、強制執行等の手続が終了し、権利の満足が得られなかったときは、時効は終了した時から新たにその進行を始めます(更新)。
また、申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過するまでの間は時効の完成猶予です。
確かに、預金口座の差押えをしたものの口座残高が振込手数料にも満たなかったため取り下げる…などといったことはあり得ますね。
(強制執行等による時効の完成猶予及び更新)
第148条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 強制執行
二 担保権の実行
三 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百九十五条に規定する担保権の実行としての競売の例による競売
四 民事執行法第百九十六条に規定する財産開示手続又は同法第二百四条に規定する第三者からの情報取得手続
2 前項の場合には、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。ただし、申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合は、この限りでない。
【仮差押え等による時効の完成猶予】
仮差押えや仮処分は、手続が終了しても時効の更新の効果はなく、6か月の時効の完成猶予のみです。
これらの保全処分はその後の本訴提起を予定する手続であるため、6か月の間にさっさと本訴提起をして、民法147条の裁判上の請求で時効の完成猶予、更新をしてくださいという意味ですね。
なお、旧民法147条ですと、1)請求、2)差押え、仮差押え又は仮処分、3)承認 が規定され、差押えと同じく仮差押え及び仮処分も時効中断事由になっていたので注意が必要です。(「時効を精査しよう(請・差・承)」と語呂合わせで覚えたものです。)
仮差押え及び仮処分には、差押えのような時効の更新の効果は認められなくなりました。
あくまで“仮”の手続であり、権利の存在について確証が得られる訳ではないですからね。
(仮差押え等による時効の完成猶予)
第149条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了した時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
一 仮差押え
二 仮処分
長くなってきたので、次へ続きます。
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