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時効の更新・完成猶予について4(弁護士・法律学習者向け)
弁護士 岡田貴文
さらに、時効の完成猶予事由及び更新事由です。
【催告による時効の完成猶予】
「催告」については旧法と変わりません。
催告は、権利者が権利行使の意思を明らかにしたに過ぎませんので、6か月の完成猶予が認められるだけです(民法150条1項)。
そして、催告による完成猶予されている間の再度の催告は、時効完成猶予の効力を持ちません(民法150条2項)。法律学習者であれば誰でも知っている判例法理(大判大正8年6月30日)が明文化されたものです。
(催告による時効の完成猶予)
第150条 催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。
【協議を行う旨の合意による時効の完成猶予】
「協議の合意」という新しい制度です。
権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、権利者が権利行使の意思を明らかにしている訳ですので、時効の完成猶予です。
ポイントは、「書面で」の合意という部分です。
猶予期間は、①合意から1年が経過するまで、②1年より短い期間を定めたときはその期間が経過するまで、③途中で協議続行の拒絶通知をしたときはその通知の時から6か月が経過するまで、のうちいずれか早いときまでです。
協議の合意の期間中に、再度の合意によってさらに完成猶予ができますが、最長は5年までです。
面白いのは、催告によって時効の完成が猶予されている間に協議合意をしても、その協議合意により時効の完成は猶予されませんので注意が必要です。
このあたりは、前述した催告中の再度の催告と同じイメージです。
(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)
第151条 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。
一 その合意があった時から一年を経過した時
二 その合意において当事者が協議を行う期間(一年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時
三 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から六箇月を経過した時
2 前項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた再度の同項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有する。ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて五年を超えることができない。
3 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた第一項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。同項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても、同様とする。
(以下省略)
【承認による時効の更新】
条文の順番にお話してきたら、一番当たり前のことが一番最後になってしまいなした。
当然ながら債務者による「承認」は時効の更新事由です。
債務者が、債権債務の存在を認めて権利の存在についてひとまずの確証が得られている訳ですから、時効の更新事由となるわけです。
(承認による時効の更新)
第152条 時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。
2 前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。
長くなってしまいました。
以上でお話ししたように、時効の「完成猶予」と「更新」については、
「権利者が権利行使の意思を明らかにした」と評価できる事実が生じた場合が完成猶予とし、「権利の存在について確証が得られた」と評価できる事実が生じた場合が更新、
というイメージで押さえておくと、頭に入りやすいのではないかと思います。
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