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無効・取消し(民法改正、弁護士・法律学習者向け)
弁護士 岡田貴文
次は、民法総則の「無効及び取消し」の条文についてです。
意思表示の瑕疵などにより法律行為が取り消されると、取り消された行為は、はじめから無効であったものとみなされます。
このことは民法121条で規定されており、旧民法から条文はあまり変わっていません。
(取消しの効果)
第121条 取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす。
さて、法律行為が最初から無効であったり、取り消されて最初から無効になった場合、原状回復をどうするかという点についてです。
この無効・取消しの場合の効果についての条文がなかったため、以前までは、不当利得に関する民法703条、同704条を使用していました(大判大3.5.16)。
改正民法では、この部分について枝番で条文が新設されました。
それが、民法121条の2です。
民法121条の2 第1項 無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。
原状回復について、今後は703条・704条ではなく、民法121条の2 第1項を使います。 司法試験の論文試験などでは条文の引用を間違わないように注意が必要です。
そして、試験対策的には、民法121条の2 第2項が重要です。
この条文では、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者について、返還義務の範囲を修正し、善意の給付受領者の返還義務が現存利益に限定されています。
無効な無償行為とは、例えば贈与が無効だった場合などです。
この場合には、無効について善意だった者は、現存利益の返還で足ります。
民法121の2 第2項 前項の規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
「無効な無償行為」の「善意の受益者」は、覚えておきましょう。
これ、逆に言えば、いくら善意であったとしても、有償行為については、現存利益の返還だけでは足らないということですので注意が必要です。
703条の不当利得の場合、善意者ならば現存利益の返還だけでよかったはずですので、その意味で121条の2は、不当利得に関する703条・704条の特則的な規定です。
この民法121条の2は、司法試験受験生の短答式試験的には必須だと思います。
(原状回復の義務)
第121条の2 無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、相手方を原状に復させる義務を負う。
2 前項の規定にかかわらず、無効な無償行為に基づく債務の履行として給付を受けた者は、給付を受けた当時その行為が無効であること(給付を受けた後に前条の規定により初めから無効であったものとみなされた行為にあっては、給付を受けた当時その行為が取り消すことができるものであること)を知らなかったときは、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。
3 第一項の規定にかかわらず、行為の時に意思能力を有しなかった者は、その行為によって現に利益を受けている限度において、返還の義務を負う。行為の時に制限行為能力者であった者についても、同様とする。
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